HTML5 Webook
73/108

大電力用途には縦型構造が望ましい。図1(a)、 (b)に、2018年グリーンICTデバイス先端開発センターが、東京農工大と共同で開発した縦型ディプレッションモーGa2O3トランジスタの断面構造模式図、光学顕微鏡写真をそれぞれ示す[13]。東京農工大にて、n型Ga2O3リフト層をハライ気相成長 (HVPE) したエピ基板を用いて、NICTにてデバイスプロセス、特性評価を行った[14][15]。トランジスタ動作原理は、エピ表面のソース電極から裏面のレイン電極への電子の流れを、両サイに配置する電流ブロック層にてアパーチャー部分に限定し、その直上に作製したゲート電極でオン/オフ制御する方式となる。電流ブロック層作製プロセスには、我々が独自開発した窒素 (N) イオン注入ーピング技術を用いている[16]。イオン注入ーピング技術は、面内でのデバイス構造の作り込みが容易にできることから汎用性が高く、加えて低コストプロセスである。そのため量産に適しており、実際の半導体デバイス製造現場で広く用いられている。我々が大きなブレークスルーと位置づける本デバイス開発に当たっては、以前開発したSiを用いたイオン注入n型ーピング技術[17] に加え、新たに開発したNイオン注入p型ーピング技術が肝となった。図2(a)、 (b)に、代表的なデバイス特性である電流–電圧特性、トランスファー特性をそれぞれ示す。デバイス特性的には、スイッチングデバイスとして最も重要なレイン電流オン/オフ比が、実用上必要な5~6桁を大きく上回る8桁を記録するなど優れたものであった。スイッチング用途に用いるパワートランジスタの場合、フェールセーフの観点からデバイスが故障した際、自動的にオフとなり電力を遮断するノーマリーオフ動作が望ましく、多くの用途で強く求められる。2019年、ノーマリーオンデバイスである上述縦型ディプレッションモートランジスタ構造をベースに、チャネル層ーピング濃度等のデバイス構造を変更することで、(a)(b)図1 縦型ディプレッションモードGa2O3トランジスタの(a)断面構造模式図、(b)光学顕微鏡写真図2 縦型ディプレッションモードGa2O3トランジスタの(a)電流–電圧出力特性、(b)トランスファー特性(a)(b)694-1 酸化ガリウム電子デバイス研究開発

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る