での高効率な変調が期待できる。高速光フェーズドアレイ光フェーズアレイ(OPA : Optical Phased Array)は、光位相変調器をアレイ状に配置した素子であり、機械的可動部なしに相互の位相関係により出射光ビームの形状と方向を制御できることから、3次元測距カメラや自動車、ローンなどに搭載できる超小型・超軽量なLiDARなどの光投影部としての応用が期待されている。アレイピッチが狭いほど高角度に偏向できることから、高屈折率のSi光導波路を用いたOPAの研究開発が主流であるが、多くのSi-OPAの位相調整は温度により屈折率が変化する熱光学効果やキャリア濃度により屈折率が変化するキャリアプラズマ効果を動作原理としており、光ビームの走査速度や消費電力に課題がある。一方で、長距離光通信で使用される高速位相変調器として印加電界に応じて屈折率が変化する電気光学効果を用いたLN変調器があるが、LNは加工性が悪く横方向に強く閉じ込める導波路作製や印加電極間隔を狭くできないため、広角走査や低電圧駆動が困難である。我々は、高速・広角走査の光ビーム制御素子を実現することを目的に、EOポリマー光位相変調器を用いたOPAの開発を行っている。EOポリマーは加工性が良く、矩形導波路に加工できることから横方向の閉じ込めを強くできる。また、電極を上下に配置しEOポリマーを挟む構造にできることから低電圧で駆動可能である。図3に、試作したEOポリマー導波路型OPAの基本構造を示す。入射光は分岐部で8チャンネル(ch)のアレイ導波路に分配され、位相制御部で各導波路chに印加される電圧に応じて位相が調整される。アレイピッチが狭いほど広角度に偏向できるが、位相調整部でアレイピッチを狭くすると印加電極相互間で短絡することからアレイピッチを20 µmと広ている。その後にピッチコンバーターによりアレイピッチを減少させ、出射端で4 µmとしている。図4は、出射端面の走査電子顕微鏡像と出射光強度分布である。横方向に強い閉じ込めができる矩形導波路に加工できていることが確認できる。出射光強度分布は、入射光が各chに均一分配され、ch間の重なりが無く出射まで分離独立した光が伝搬していることを示している。最大偏向角の測定では、まず、隣接ch間位相差がゼロとなるようにオフセット電圧を調整した後に、偶数chにのみ±V の矩形波を入力した際の2つのビーム間隔から偏向角を算出すると22.1度であり、理論値(22.3度)に近い偏向角が得られた[4]。また、高速偏向の測定では、隣接ch間の振幅差をV とした周波数2 MHzの正弦波電圧を印加し、フォトダイオーを横切る光を測定することにより高速動作を確認した[5]。3図2 光変調性能指数の比較図4 出射端のSEM像と出射光強度分布図3 光フェーズドアレイの基本構造52-1-1 電気光学ポリマーの高性能化と新規光制御デバイスへの応用
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