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非対称性な長方形空気孔対で構成されており、その構造パラメータは 平面上でそれぞれ と で与えられる。第3層は第1層と同様にAg薄膜から成るが、ネガポジ反転した構造をしている。すなわち、Agから構成される1対の金属バーから成る。中間層である第2層も第1層に対してネガポジ反転した構造であるが、基板と同じ石英から構成されている。メタ表面偏光子の 及び 方向の周期はそれぞれ 及び である。金属層( )と誘電体層()の厚みはそれぞれ45 nmと200 nmである。空気孔対及び金属バー対は100 nmだけ 方向に離れている。メタ表面の透過率を計算するにあたり、周期を850 nm, 900 nmに設定した。簡単のため、まずは空気孔対の長手方向の長さが同一である場合( )を考え、その長さ を380 nmから440 nmまで変えて透過率の 依存性を考える。このような条件下でメタ表面に平面波を入射し、 及び 偏光に対する透過率を数値計算する。ここで、メタ表面を構成する材料特性について述べる。Agの誘電率はDrude-Lorentzモデルで与え、文献から振動子のパラメータを採用した[42]。石英基板の屈折率はSellmeirの関係式で与えた[43]。空気の屈折率は1としている。この設計自体は周期が 及び 方向で異なることを除けば先行研究と同一である[35]–[38]。これらのパラメータと光学応答との関係性を述べておくと 及び 方向の周期はSPPsの共鳴波長に影響を与える。金属層の厚みはSPPsの励起強度に影響を与える。そして、空気孔の大きさは局在型SPPsの共鳴波長と励起強度に影響を与える。本稿では、有限要素法を用いた市販ソフトウェアであるCOMSOL Multiphysics®を用いて電磁場解析を行った。図3に示すのは垂直入射(0∘ )における 及び 偏光に対する透過スペクトル( 及び )の計算結果である。バーの長さが400nm以下の場合、 には単一のピークだけが存在する。バーを長くしていくと、波長1365 nm近傍にディップが現れはじめ、バーの長さが420 nmのときにディップが顕著となる。対照的に、 はバーの長さに対して大きな変化はない。ディップが深く、顕著になるにつれて消光比は増大していき、2×105に達している。この消光比は先行研究で報告されている値(2×104程度)よりも1桁大きい[35]–[38]。バーの長さが420 nmより大きくなると、共鳴構造は徐々に消失し、それに伴って消光比も減少していく。これらの数値計算からバーの長さには最適値が存在し、 偏光に対してのみ存在する共鳴が消光比を増大させることが分かる。更に消光比を増大させるために、バーの長さを最適化し、共鳴を緻密に制御することを試みる。消光比を最適化するパラメータとして、長方形空気孔対の長さに非対称を導入する。特に、 の場合を考える。まずは、 を540 nmに固定して、 を330 nmから370 nmまで10 nm刻みで変えて、消光比の変化を計算した(図4)。その結果、350 nmの場合に消光比が最大となっていることが分かった。130013201340136013801400Wavelength (nm)101102103104105106107108Extinction ratio330 nm340 nm350 nm360 nm370 nm2図4 消光比のバーの長さ(インセット中のb2)依存性インセットはメタ表面偏光子の単位胞の上面図を示している。図3(a)x及びy偏光に対する透過スペクトル及び(b)消光比のバーの長さ(インセット中のb)依存性、インセットはメタ表面偏光子の単位胞の上面図を示している。13001310132013301340135013601370138013901400Wavelength (nm)101102103104105106Extinction ratio380 nm390 nm400 nm410 nm420 nm430 nm440 nm13001310132013301340135013601370138013901400Wavelength (nm)0.250.30.350.40.450.50.550.60.650.7Transmittance (x-polarization)10-610-510-410-310-210-1Transmittance (y-polarization)Tx (380 nm)Tx (390 nm)Tx (400 nm)Tx (410 nm)Tx (420 nm)Tx (430 nm)Tx (440 nm)Ty (380 nm)Ty (390 nm)Ty (400 nm)Ty (410 nm)Ty (420 nm)Ty (430 nm)Ty (440 nm)(a)(b)86   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)4 環境制御ICT基盤技術  —基盤から社会展開まで—

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