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在SPPsモー励起に対応するディップがあり、最上層の には波長1320 nm近傍で伝搬型SPPsモー励起に対応する分散型の共鳴がある。しかし、積層構造の透過スペクトルには、1355 nm付近にこれらの特徴が見られる。この比較から、全体の光学応答は個々の相補的構造の透過スペクトルの掛け算ではなく、2種類のSPPs励起によって相補的構造が結合したことによる効果を考えなくてはいけないことが分かる。2.2.2連結振動モデルこれまでの電磁場解析結果は次のようにまとめられる。電磁場分布から透過率が極小となる場合に伝搬型と局在型SPPsが同時に励起されていることが分かった。相補的構造の透過スペクトル解析から、メタ表面の 偏光に対する透過スペクトルは最上層と最下層の相補的構造の透過スペクトルの積で表すことができず、メタ表面内の相互作用が全体の光学応答に支配的役割を果たしていることが分かった。これらの知見を基に、2つのSPPs共鳴間の相互作用が 偏光に対する透過に与える効果を考える。SPPs間の相互作用を解析するにあたり、次のように与えられる結合振動子モデルを考える:, (3). (4)ここで、,,,, そして はそれぞれ 番目の振動子に対する変位、ダンピング定数、共鳴周波数、入射波に対する結合効率、振動子に働く力、そして振動子間の結合定数である。振動子 及び はそれぞれ伝搬型及び局在型SPPsを表している。伝搬型SPPsの共鳴周波数ω は 方向の周期に依存している。この結合方程式の解は次のように与えられる:iiii. (5)この解から、2つの振動子の変位の和 を計算し、振動子全体の応答を特徴付けることができる。2つの振動子に対する共鳴周波数及びダンピング定数をω0.9215 eV, ω0.8856 eV, γ0.008 eV, γ0.03 eVと設定する。これらのパラメータは共鳴周波数とその線幅から決定した。交互作用定数κ は2つのSPPsモーによる電磁場の重なり積分に比例している。伝搬型SPPsによる電磁場は主として 方向を向いている一方、局在型SPPsによる電磁場は主として 平面内にある。これらの電磁場はほぼ直交しているため、相互作用定数κ の値は小さいと考えられる。結合効率α に関しては、単純のため入射場との結合に伴う損失は無いと仮定しα α1 とする。これらの条件下で、数値計算結果で得られた における主な特徴を再現するように をフィッティングした結果、0.020.0174i という値を得た。図9(a)に全体の変位 と系を駆動する電磁気力 との比の振幅|/| を青線で示すが、数値計算で得られた極めて鋭いディップが存在していることが分かる。この特徴は系全体の振幅がほぼ0となっていることを示しており、2つの振動子間の破壊的干渉(destructive interference)によって反共鳴状態となっている。破壊的干渉が生じていることを明確に示すため、各々の振動子を振幅強度と位相で記述する: ||,|||| 。ここで、 及び はそれぞれ 及び の位相である。これらの記述を使えば、系全体の振幅 は次のように書くことができる:e ||||. (6)式(4)は2つの振動子の強度と位相差が系全体の振幅 の応答を理解する上で重要であることを示している。図9(b)は と の強度と位相差のスペクトルを示している。極めて鋭いディップでは、 と の強度がほぼ等しく、位相差が180°であることを示しており、破壊的干渉によって0 となっていることが裏付けられる。このような干渉効果は伝搬型と局在型SPPs間の間で生じ、それらの相互作用に依存して低図9 (a) 変位を駆動力で割った値¦X/F¦のスペクトル(左軸)とy偏光に対する透過スペクトル(右軸)、(b) 振動子の強度振幅(左軸)と位相差(右軸)スペクトル。青線の実線及び破線はそれぞれx1とx2の振幅を示している。12001250130014001450150010-1100101102Amplitude (Arb. Unit)-180-135-90-4504590135180Phase difference (degree)|x1||x2|Phase difference12001250130014001450150010-410-2100102Amplitude (Arb. Unit)10-810-610-410-2Transmittance (y-polarization)|X|Ty(a)(b)1350 Wavelength (nm)1350 Wavelength (nm)90   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)4 環境制御ICT基盤技術  —基盤から社会展開まで—

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