を述べておきたい。相補的構造間の誘電体スペーサーの厚みは局在型SPPsの波長よりも厚く、/(2) よりも薄いと仮定している。ここで、 と はそれぞれ真空中の波長と誘電体スペーサーの屈折率である。この仮定によりスペーサー間でFabry-Perot共鳴が成り立つ条件を除外できるため、ダイアグラムが極めて単純化される。2.2.4超高消光比の波長チューナビリティ前の段落で超高消光比が発現する物理的メカニズムについて述べた。この知見を基に、超高消光比が発現する波長に対するチューナビリティを考える。超高性能は 偏光に対する極めて小さな透過率 によって実現し、局在型と伝搬型SPPsによる干渉効果によって生じる。これらの2つのSPPsの共鳴条件は構造パラメータに対してスケーラビリティを持つ。さらに、極めて小さな透過率を実現するためには、これらの2つのSPPsの結合を精密に制御する必要がある。Oバンで実現した超高消光比をCバンで発現するように調整するために、メタ表面の構造パラメータを次のようにアップスケールする:990 nm, 1040 nm。このスケールアップに伴って、バーの長さも延長する。さらに、SPPs間の破壊的干渉を制御するために、右側のバーの長さを変えて透過率が極小となるように最適化した。図11(a)に595 nm, 405 nmの場合の垂直入射近傍における角度分解透過率と消光比スペクトルを示す。波長1577.6 nm近傍かつ入射角+1°では、 及び がそれぞれ約0.52及び2.5×10–12となっている。消光比のピークはシャープかつ巨大であり、その値は200×109以上である(図11 (b))。これまで示したように、この超高性能は単純なスケーリング則と最適化によって実現することができ、実用に向けた設計上も好ましい。2.2.5サンプル作製上の不完全性が与える影響これまでの数値計算で、メタ表面偏光子が3×109以上の消光比を潜在的に有することを示してきた。そのような極めて高い性能は一般的にはサンプル作製における構造の擾じょう乱らんにより劣化する恐れが強い。ここでは、理想的な構造パラメータからの差異がどのような影響を与えるかを議論する。考えるべきパラメータはいくつもあるが、バーの幅と長さ、金属層の厚み、そして石英のエッチング深さに注目する。図12は(a)–(d) 及びy 偏光に対する透過率スペクトルであり、消光比スペクトルの(e), (f) バーの幅、(b), (f)右のバーの長さ、(c), (g)金属層の厚み、(d), (h)石英のエッチング深さ依存症を示している。 偏光155515561557155815591560Wavelength (nm)10410610810101012Extinction ratio-1°0°+1°15551556155915600.490.50.510.520.530.54Transmittance (x-polarization)10-1210-1010-810-610-4Transmittance (y-polarization)-1°0°+1°-1°0°+1°(a)(b)1557 1558 Wavelength (nm)図11(a)x及びy偏光に対する透過スペクトル、右軸はログスケールで示されている。(b)最適化されたメタ表面偏光子の消光比スペクトル。135013521354135613581360Wavelength (nm)0.530.540.550.560.570.580.59Transmittance (x-polarization)10-810-710-610-510-410-310-2Transmittance (y-polarization)345 nm350 nm355 nm345 nm350 nm355 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)102103104105106107108Extinction ratio135 nm140 nm145 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)0.530.540.550.560.570.580.59Transmittance (x-polarization)10-810-710-610-510-410-310-2Transmittance (y-polaization)135 nm140 nm145 nm135 nm140 nm145 nm(a)(b)135013521354135613581360Wavelength (nm)102103104105106107108Extinction ratio345 nm350 nm355 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)0.550.5550.560.5650.570.575Transmittance (x-polarization)10-810-710-610-510-410-3Transmittance (y-polarization)195 nm200 nm205 nm195 nm200 nm205 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)102103104105106107108Extinction ratio195 nm200 nm205 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)102103104105106107108Extinction ratio40 nm45 nm50 nm135013521354135613581360Wavelength (nm)0.520.530.540.550.560.570.580.590.6Transmittance (x-polarization)10-810-710-610-510-410-310-2Transmittance (y-polarization)40 nm45 nm50 nm40 nm45 nm50 nm(c)(d)(e)(f)(g)(h)図12 透過率と消光比の(a), (e)バーの幅、(b), (f)右のバーの長さ、(c), (g)金属構造の厚み、(d), (h)中間石英層の高さ依存性92 情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)4 環境制御ICT基盤技術 —基盤から社会展開まで—
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