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に対する透過率は、構造パラメータの擾乱にあまりセンシティブではない単一の共鳴によって高透過率が実現しており、これらのパラメータにあまり大きく依存しない。一方で、図12は 偏光に対する極めて小さな透過率が理想的な構造パラメータからの差異に極めてセンシティブであることを示しており、サンプルの構造パラメータが理想値から外れることによって は増加してしまう。これは、干渉が構造パラメータの擾乱に強く影響を受けることに起因する。このように、 偏光に対する透過率が増加してしまうと消光比が劇的に減少してしまう。これらの計算結果から、サンプル作製における不完全性に起因する不均一広がりが干渉効果を劣化させ、現実的な状況下では消光比が低減してしまうことが分かる。超高消光比を実験的に実現するためには、屈折率を外部変調するなどして干渉効果を精密に制御する必要があるだろう。例えば、電気光学効果や熱光学効果などで屈折率を変調することが有効だと考えられる。2.3深紫外光領域において超消光比を有するメタ表面偏光子2.3.1通信波長帯から深紫光領域へ通信波長帯域における異方的メタ表面偏光子の研究から、伝搬型と局在型SPPsとのFano干渉によってある偏光に対する透過率を極小化させ、バビネの原理から直交する偏光に対しては大きな透過率を実現できることが分かった。この知見を深紫外光領域に展開するにあたり、単純には波長と構造のスケーリング則によって構造を微細化すればよい。しかし、深紫外光領域では通信波長帯域と比較して、金属の光損失が大きく、事情は単純ではない。具体的には、バビネの原理では不透明なスクリーンは完全導体であると仮定しており、大きな光損失が生じる深紫外光領域ではこの仮定が成り立たなくなる。したがって、DUV領域では単なるスケーリング則に基づく設計を行うことはできない。メタマテリアルにおいては、この光損失によるデバイス性能低下を避けるために透過型ではなく、反射型メタ表面を用いることがある。本研究においても、偏光子を反射型へ変更し、深紫外光領域におけるメタ表面偏光子の設計を行うことにする。通信波長帯域におけるメタ表面偏光子の研究から、系に異方性を導入して、伝搬型と局在型の2つのSPPsによるFano干渉によってある偏光に対しては反射波を破壊的干渉により打ち消すように設計することが必要である。偏光子として動作するためには直交する偏光に対しては反射率を高めることが必要となるが、深紫外光領域においても高い反射率を示す金属は存在する(アルミニウムなど)ためこれは容易である。以上を踏まえ、今回設計したメタ表面DUV偏光子の模式図を図13に示す。このメタ表面偏光子はAl(アルミニウム)矩形状グレーティング/Al2O3(アルミナ)誘電体薄膜/Al膜の3層膜から成る。厚みはそれぞれ// である。グレーティングの周期と溝幅はそれぞれ,/2 である。メタ表面偏光子は石英基板上にあるとする。このような系はプラズモニクスで大変よく知られた構造であるが、本研究では深紫外光領域において超高消光比を有する偏光子として機能することを示す。まず、DUV偏光子の性能を示すために、Liのアルゴリズムによって収束性が改善された厳密結合波解析(Rigorous Coupled Wave Analysis: RCWA)を用いた数値計算を行う[47]–[49]。数値計算において、逆格子ベクトル数を161とした。Al2O3及び石英基板の屈折率は文献から採用した[50]。Alの誘電率はDrude-Lorentzモデルで記述し、モデルのパラメータは文献から採用した[42]。最初に、垂直入射におけるメタ表面DUV偏光子の光学応答に注目する。この配置では、偏光を分離するためにハーフミラーが必要となる(図14(a))。構造パラメータとして150 nm,20 nm,25 nm,25 nm として 偏光入射に対する光学スペクトルを計算した結果を図14(b)に示す。赤線で示された反射スペクトルにおいて、波長259 nm近傍に極めてシャープなディップ構造があり、その最小値は約1.14×10–7で極めて小さい。このシャープなディップはブローなディップ構造の中に存在しており、そのブローな反射ディップと吸収スペクトル(緑線)のピークが対応している。図14(b)は 偏光に対する光学スペクトルの計算結果である。 偏光に対する光学スペクトルと比較して特に際立った特徴は無く、深紫外光領域において、このメタ表面偏光子が60%以上の反射率を持つミラーとして振る舞うことが分かる。図 14(d)に/ から計算される消光比スペクトルを示す。波長259 nm付近に鋭いピーク構造があり、 のピークに対応していることが分かる。消光比の最大値は約6.2×106であり、この値はプリズム偏光子で達成できるような極めて大きな値である。これらの計算結果から、メタ表面偏光子が 偏光に対しては極めて小(a)(b)Quartz substrateAl: Al: Al2O3: 0図13 DUVメタ表面偏光子の(a)鳥瞰図、(b)断面図934-2-2 深紫外偏光制御デバイスの研究開発

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