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さな反射率を有し、 偏光に対しては大きな反射を有することで結果として6.2×106を超える超高消光比が実現することが分かる。図14(d)のインセットに示すように、消光比が極めて大きく増強している波長域では、消光比スペクトルに非対称性が現れることが分かる。一方で、消光比が102程度にとどまっている波長600 nm付近の消光比スペクトルは典型的なLorentz型の共鳴構造を有している。このスペクトル形状の比較からも超高消光比が単純な共鳴によって実現しているわけではないことが分かる。次のセクションでメタ表面に生じる固有モーを明らかにし、その分散関係から超高消光比が生じる物理的メカニズムを明らかにする。2.3.2深紫外メタ表面偏光子のディスカッション2.3.2.1深紫外メタ表面偏光子の分散関係メタ表面における分散関係を明らかにするために、角度分解反射スペクトルを計算する。図15(a)はp偏光に対する角度分解反射率スペクトルの擬カラープロットである。ここで、偏光の表記について述べる。本稿では、垂直入射の場合に/ 偏光と表記し、斜入射の場合にp/s 偏光と表記する。縦軸は光子エネルギーを、横軸は逆格子ベクトル2/ で規格された入射波数の周期方向への射影成分(∥ )である。このスペクトルには大きく3つの特徴がある。1つ目はΓ 点(垂直入射)において光子エネルギー4.8 eV近傍で交差するモーである。このモーはAl/基板界面における1次の伝搬型SPPsである。2つ目は伝搬型SPPsが交差する点の近傍において比較的フラットなモーである。3つ目が2 eV(∼620 nm)近傍におけるブローなモーである。このモーはとてもフラットな分散を示し、この点において2つ目のモーと類似している。高エネルギー側にある残りの分散は空気側の1次回折のチャンネルが開いたことを示している。これらの分散曲線と擬カラーの値から、2つのモーが交差する点の近傍で反射率が非常に低減することが分かり、2つのモー間の破壊的干渉により極めて小さな反射率が実現していることが分かる。図15(b)はs偏光に対する角度分解反射率スペクトルの擬カラープロットである。メタ表面はs偏光に対しては高い反射率を持ち、p偏光の場合と比較して特図14(a)メタ表面DUV偏光子の模式図、垂直入射動作用にハーフミラーが必要となる。(b)x及び(c)y偏光に対する光学スペクトル、(d)消光比スペクトル、インセットは波長260 nm近傍で拡大した図である。300400500600700800Wavelength (nm)10-810-610-410-2100Reflectance00.20.40.60.81Transmittance, AbsorptanceReflectanceTransmitanceAbsorptance300400500600700800Wavelength (nm)00.20.40.60.81Optical SpectraReflectanceTransmittanceAbsorptance300400500600700800Wavelength (nm)100102104106108Extinction Ratio(a)(b)(c)(d)220240260280300320Wavelength (nm)100102104106108Extinction RatioHalf Mirror(a)(b)図15(a)p偏光及び(b)s偏光に対する角度分解反射スペクトル。横軸は波数の水平方向成分を示しており、逆格子ベクトルG=2π/Pxで規格化されている。カラーバーは反射強度を示し、白色の破線はモードのガイド用に描いてある。94   情報通信研究機構研究報告 Vol.66 No.2 (2020)4 環境制御ICT基盤技術  —基盤から社会展開まで—

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