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広くとっている。観測からオーロラの絶対強度を導出するため、国立極地研究所に設置の積分球を利用した光学観測実験を、各カメラにて実施している。また、暗電流を考慮するため、ダークの測定実験も実施しており、発光現象の評価を定量的に行える。オーロラは、最も明るい場合100キロレイリーを超える明るさが期待される。カメラの感度特性から、比較的暗いオーロラも撮影できるように、露出時間を1/60秒×32回積分とした。データ取得は、ハードディスクの容量の問題もあり、0.5 Hzとしている。保守性を向上するため、HTTPサービスを利用し、リアルタイムでもデータを確認できるようにしている。観測結果を図28に示す。カラーカメラは他の三つのモノクロカメラと比較して比較的視野が狭く、かつ感度も悪い。大気発光現象の確認にはあまり有用ではなかった。しかしながら、昼の画像は鮮明に捉えられており、モノクロカメラでは難しい高層雲などの区別に有用である。3.4船上観測(長波電界強度測定)電波時計に使われている長波標準電波の遠距離への伝わり方を知るために、時空標準研究室の協力の下、長波標準電波の電界強度と位相変化の観測を「しらせ」が日本と南極を往復する航路上で2007~2016年まで実施した(図29)。この観測データを、NICTが開発している長波の遠距離への伝わり方を求める新たな計算法に基づく計算結果と比較し、観測が計算結果とよく一致することを示した。この計算法は、長波の遠距離への伝わり方を求める計算方法の国際標準として2009年に国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)に認められた[14][15]。宇宙天気予報データに必要なデータ収集 4.1概要高緯度地域に位置する南極昭和基地で観測される電離層定常観測データは、宇宙天気の現況把握と予報の基礎データとしている。また、シミュレーションモデルのインプットデータとして採用が期待される。現況の把握と予報利用には、データ収集に即時性が求められるが、日本から直線距離で約14,000 km離れた特異な環境となる昭和基地との情報の授受は困難なものとなる。しかし今日においては、図30のように昭和基地に滞在する南極地域観測隊はインテルサット衛星による衛星通信システムを用いた国立極地研究所管理の4図28STWIによる撮像例(ぞれぞれ、カラー(左)、430 nm(上右)、560 nm(下左)、632 nm(下右))カラーカメラの結果は、光量が不十分なため、他の結果と同様、白黒になっている。図29 長波電界強度測定:アンテナと観測機材94   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究

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