ネットワークを利用することで、数十分程度の遅延で日本国内との情報授受を可能としている。4.2伝送する観測データ当研究室が南極観測隊員を派遣している電離層定常観測部門では、FMCW電離圏垂直観測装置及びGPS衛星電波シンチレーション観測装置により取得された観測データ、電離圏垂直観測の補助データとして用いる宙空圏変動部門観測の地磁気観測データや、観測装置の動作確認のための機器ステータス情報、高感度ネットワークカメラ映像といった機材保守情報等を、NICTが日本国内に構築するNICTクラウドに構成された仮想マシン及び大規模ストレージシステムへ準リアルタイムでネットワーク伝送している。それに加えて、近年ではGNSS衛星電波シンチレーション観測、全天イメージャ等試験観測についても同様にデータの収集と伝送を行うこととしている。一方で、インテルサット衛星通信システムで利用可能なネットワーク帯域幅には制限があることにより、大容量の観測データ(RAWデータ)については昭和基地側の装置で簡易的な解析を実行している。特に必要な情報を抽出し抜粋するポストプロセス処理を実施しており、データ容量を小さくした加工済みデータを優先して転送している。この処理により低負荷、低遅延なデータ転送を実現している。4.3データ転送に用いる装置第62次観測隊(令和2年度)では、第52次観測隊(平成22年度)より運用していた昭和基地電離層棟及び電離層観測小屋に設置されたLinuxサーバによるデータ転送システム2式に代わり、後継機となる新型データ転送システム1式を基本観測棟に設置し、観測データの収集と転送機能を集約し、更なるデータ伝送の効率化を図った。この新型観測データ転送システムは、OSにLinuxを搭載した約64 TBのデータ保存領域を持つストレージサーバとした。昭和基地に設置された電離層定常部門の各観測装置に蓄積された観測データは新型データ転送システムに集積され、その後日本国内に構築されるNICTクラウドの大容量ストレージに転送される。転送されたデータは、データ保全と利活用向上のためNICT本部(小金井)に設置されている南極観測データ蓄積用サーバにも複製され保管される。図31に示す新型データ転送サーバによるデータ収集・転送は、全て自動化されている。自動処理に用いているプログラムは、昭和基地という特殊な環境から障害発生時の緊急対応をNICT以外の南極観測隊員が行う可能性を鑑み、取り扱いの平易さ、保守性の向上を目的に標準的なLinuxプログラムを中心に用いた専用のPerl及びBashシェルスクリプトとして開発を行った。衛星通信システムによるデータ転送には不向きである大容量の観測RAWデータ及び高解像度画像等は、毎年NICTが派遣する観測隊員が、昭和基地での夏期行動期間中にポータブルストレージへ複写を行い、持ち帰ることとしている。図30南極昭和基地から情報通信研究機構へのデータ伝送 電離圏垂直観測、GPS衛星電波シンチレーション観測、データロガーデータ、カメラ映像、地磁気データ等必要なデータを衛星回線でNICTまで準リアルタイムに伝送している。952-9 南極電離圏観測
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