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た。代表的なものに、ミシガン大学主導によるSpace Weather Modeling Framework (SWMF) [10]、ボストン大学・NOAA・ユタ大学などによるCenter for Integrated Space Weather Modeling (CISM)プロジェクトがある。その後も、多数の機関と人員によるモデルの整備が組織的に進んでいる。また、2019年よりNASAとNSFのファンディングによるサイエンスセンター構想が立ち上がり、新たなモデル統合プロジェクトが始動する可能性もある。日本も各モデルは高いレベルにあるので、関連機関が協力して日本としての統合型シミュレータを目指す時期にあると考えている。2.2NICTにおける磁気圏MHDモデルの特徴NICTにおける磁気圏MHDモデルは、Tanaka[15]により開発されたものをベースとしている。本モデルの特徴は、球面非構造格子を用いることにより、惑星や恒星など球状の天体システムを高空間分解能かつ安定的に解くことができるという点にある[18]。極めて強い太陽風条件に対する磁気圏応答も計算可能であるというロバスト性も確認されている[19]。MHD方程式系は下記のように保存形式で表現できるため、有限体積法を用いることで非構造格子でのシミュレーションが可能となっている。 0  (12) 120  (13)12v1220 (14) 0  (15)2.3磁軸の傾きと歳差効果の導入現実の太陽地球系では、地球公転面に対して地球自転軸が傾いており、さらに地球自転軸と磁軸がずれていることから、傾いて回転する自転軸の周りを磁軸が回転するという複雑な歳差運動があるが、従来のモデルは計算空間の座標軸と磁軸と自転軸が同一であった。これを予報や運用に耐え得るモデルにすべく、磁軸の傾きと歳差効果の導入を実施した[20][21]。これにより現実的な条件下でのシミュレーションが可能となった(図2)。また、将来的な電離圏・大気圏モデルとの結合が形状的には可能となった。図3に、磁気圏の活動度の指標の一つとなるオーロラ帯の地上磁場変動の様子を示す。黒線は観測データで(SuperMAG(https://supermag.jhuapl.edu)[22]より取得)、北半球磁気緯度40-80度に入る観測点での地上磁場南北成分(北向き正)の最大値が取られている。つまり、正/負の変動はそれぞれ(SuperMAGデータのUpper/Lowerという意味で、SMU/SMLインデックス[23]と呼ばれる)、東/西向きの電離圏電流の強度を反映している。青・赤及び水色・ピンクの線はシミュ図2夏至の模擬計算例 白線は磁力線、カラーはプラズマ圧力、電離圏のカラーは伝導度、コンターはFAC。改良により、季節や南北の違いを取り入れることが可能になった。電離圏(北半球)電離圏(南半球)電離圏(北半球)電離圏(南半球)改良前磁軸の傾きと歳差効果を導⼊(夏⾄の模擬計算)図3オーロラ帯(磁気緯度60-70度)の地磁気南北成分の最大/最小値 黒線は観測データ(SuperMAGより取得)、青と水色の線は改良前、赤とピンクの線は改良後のシミュレーションデータ、(a)は2012年12月20日、(b)は2016年6月17日のデータ(a)(b)図4 電離圏伝導度を改良したコードでの計算結果 図3と同書式(a)(b)100   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)3 磁気圏研究

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