まえがき現代社会は、宇宙空間中の人工衛星から得られる情報を、様々な分野で利用している。例えば、GPSによる測位システムは位置情報サービスや自動運転技術を支えているほか、気象衛星ひまわりは天気予報から防災、社会経済活動に至るまで、我々の生活に欠かせない役割を担っている。その一方で、衛星障害が起きた場合、これらに依存する現代社会は大きな影響を受けることが懸念される（図1）。人工衛星の障害要因の一つに宇宙環境が挙げられる。宇宙は強い放射線が飛び交う過酷な環境であり、銀河系内で起こった超新星爆発の残骸を起源とする銀河宇宙線や太陽フレアに伴って発生する高エネルギー粒子は、人工衛星の構体内に侵入し半導体素子などに影響を及ぼす。また、地球の固有磁場の勢力圏内である地球磁気圏（以下磁気圏）内に閉じ込められている数keVから数MeVのエネルギーを持つ電子は、人工衛星の表面や内部の電気･電子回路を帯電させる。この帯電がしきい値を超えると放電が発生し、物理的な破損や電磁パルスによるシステム機器への障害を引き起こす。将来に向けて我々が持続的な宇宙利用／開発をすす1図1宇宙環境が現代社会で用いる通信に与える影響に関する概略図電離圏による電波伝搬への影響に加え、宇宙環境を原因とした衛星障害も我々の社会活動に影響を及ぼす。帯電による衛星障害通信障害宇宙環境を原因とした衛星障害宇宙空間に広がる地球磁場の勢力圏内を地球磁気圏と呼ぶ。地球磁気圏は高エネルギー電子を閉じ込める性質を持っており、静穏時はほぼ定常状態を維持する。しかしながら、地球磁気圏が荒れる「磁気嵐」の時には、光速に近い速度を持つ電子を急に増やしたり、逆に減らしたりもする。特に高エネルギー電子の急増は宇宙機器に不具合や障害を起こすことが知られている。本研究では地球磁気圏に捕捉された高エネルギー電子を多数追跡することで、高エネルギー電子分布を再現するシミュレーションモデルの開発を進めている。本稿では地球磁気圏中の高エネルギー電子の概略を紹介するとともに、これを再現するためのモデルについて説明する。The global magnetic field of the earth spreading in space is called the magnetosphere. The geomagnetic field can trap energetic electrons which accelerate through several processes occur-ring in the space. When it is quite condition, the electron distribution maintains a nearly steady state. However, when the geomagnetic field is disturbed in “geomagnetic storms,” the flux of relativistic electrons either rapidly increases or decreases. In particular, the rapid increase of energetic electron flux is known to cause anomalies in spacecrafts.In this paper, we are developing a simulation model to reproduce the electron flux in the geo-magnetic field, by using test-particle model. This paper provides an overview of the energetic electrons in the geomagnetic field and description of the numerical model to reproduce the flux variation as real-time operation.3-2 放射線帯粒子シミュレーション3-2Test-particle Simulation for Radiation Belts齊藤慎司SAITO Shinji1053 磁気圏研究
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