(a)テスト粒子重み付け手法エネルギーEiと赤道ピッチ角αeq,jを持つテスト粒子が、エネルギー幅ΔEi、ピッチ角幅Δαeq,j、面積ΔA内を1秒間にnij個通過する場合、この中で定義されるフラックス量は、 ,,, /cm/eV/str/s (15)として定義される。ここで添字i,jはそれぞれエネルギーとピッチ角のグリッド位置を意味する。エネルギーEiと赤道ピッチ角αeq,jでのフラックスをjref,ijとした場合、必要な電子数Nijは以下のように定義される。 ,∆∆2sin,∆, (16)これより、上記範囲内に入るテスト粒子一つが担うべき電子数は、 ,, (17)として定義される。これにより与えられたフラックス分布を基にしたテスト粒子の重みWが決定される。(b)動径方向拡散モデル与えられたテスト粒子のL値に対してモンテカルロ法を用い、動径方向拡散を再現する。ダイポール磁場中において、動径方向拡散は準線形拡散モデルとして以下のように記述される。 (18)ここでFは断熱空間中の位相空間密度、 は動径方向拡散係数を示し、 (19)として定義される。ここで[ ]は平均を意味し、∆ は時間間隔を示す。Fujimoto and Nishida(1990)[11]より、一つの粒子が持つL値に対して、 による拡散プロセスは以下のように記述される。 2/ (20)正負の符号は一様乱数を用いて同確率で選択する。多数電子のL値にそれぞれこのプロセスを適用することで動径方向の拡散が再現される。ここで必要になる動径方向拡散係数 はOzeke et al.(2014)[12]で提案されている経験モデルを用いる。粒子軌道上の磁場じょう乱に関係する拡散係数 と、電場のじょう乱に関係する拡散係数 が定義されており、それぞれ6.621010.... (21) 2.161010.. (22)としてKp指数の関数として表現される。ここでKp指数とは極域付近での地磁気の荒れ具合を示す指標である。図7はKp指数をパラメータとした拡散係数のL値分布を示す。L値が大きいほど拡散係数は大きくなる。太陽風データを基に推定するKpの経験モデルを利用することで、太陽風データ駆動の動径方向拡散モデルが構築される。3.4経験/物理結合モデルのテスト結果ここでは実際に得られた太陽風データを基に、結合モデルで得られたテスト結果を示す。図8は2021年5月26日に観測された太陽風じょう乱とこれを基に機械学習で推定されたKp指数を示している。2015年から2020年までに観測された太陽風とKp指数(OMNI2 data:https://cdaweb.gsfc.nasa.gov)を基に、scikit-learn(https://scikit-learn.org/stable/)を用いてロジスティック回帰によるKp指数のクラス推定を行っている。推定精度については今後詳しい検証を行う。図9は推定されたKp指数から得られた拡散係数を用いたときの、放射線帯電子フラックスの時間変化を示している。横軸はL値、縦軸は約850keVからLL図7動径方向拡散係数に対するL値方向の分布 横軸をL値、縦軸を拡散係数としている。Kp指数を1 – 6として与えている。上図は磁場じょう乱から推定される拡散係数、下図は電場じょう乱から推定される拡散係数を示している。110 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)3 磁気圏研究
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