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1MeVの電子フラックスを示している。初期のフラックス分布はJAXA/SEES(宇宙環境計測情報システム)から提供されている「あらせ宇宙天気データ」とNICT宇宙環境研究室によって開発された予測モデル[13][14]を用いて推定している。全体的にはフラックスは減少傾向にある。同時刻帯の静止軌道上の電子フラックス観測(GOES-16)でもフラックスの減少が観測されており、定性的には観測と一致している。一方で、L値が4付近では増加の傾向が見られる。これは拡散により一部の電子が内側へ輸送、加速されたためだと考えられる。実観測との比較・検証については今後の課題となる。結合モデルの最終段階として、テスト粒子モデルで推定されたフラックス分布の変化を磁気圏へマッピングする。前段の物理/経験モデルで計算されたフラックス分布は(L, E, αeq)の関数として与えられる。あるLからL+ΔLの値を持つ電子が磁気赤道上でフラックス分布j(E, αeq)を示すように、テスト粒子の重み付けを行う。より確からしいフラックスの空間分布を得るためには、適切な3次元磁場構造を構築するモデルが必要となる。ここでは磁気圏の研究者コミュニティで多く利用されているTsyganenkoモデル[15]を導入する。これは、太陽風時系列データとDst指数を入力とし3次元磁場構造を構築する。太陽風データを基に得られた磁場構造中でのLシェルを推定し、この中を動く電子についてフラックスを再現するための重み付けを行う。しかし一般には太陽風の影響を受けて変形した磁場構造内ではLシェルを特定するのは困難であるため、ここでは真夜中側の磁気赤道上において、あるLシェルのL値を以下のように定義する。 /  (23)ここで は磁気赤道上での磁場強度、B0は地球赤道地表面付近での磁場強度(3.12×10-5 [T])を示している。これは式(8)で定義したものに近似される。真夜中磁気赤道上のLからL+ΔL内にテスト粒子を与え、ランダムなドリフト位相を与えることで経度方向に一様なテスト粒子分布を構築する。これらが断熱運動をすることを仮定し、単位時間に通過するテスト粒子を(E, αeq)上で数えることで、フラックス分布を再現するための重み付けが可能になる。定義されたLシェル上すべてでこのような重み付けを実行後、一様に展開されたテスト粒子すべてを一定時間追跡することで、各グリッド上でのフラックス量を推定する。図10は図9で得られたフラックス分布を3次元展開したものである。GSM座標系におけるZGSM=0上での2次元フラックス分布とYGSM=0上の分布を色で投影している。フラックス量は約850 keVから1 MeVの電子フラックスを示しており、色はログスケールとしている。背景の灰色の線は磁力線を示す。図9と同様に、全体的にフラックスが減少しているのが再現され図82021年5月26−28日(UT)にかけてDSCOVR衛星によって観測された太陽風上から太陽風速度、プラズマ密度、南北方向磁場強度及びこれらのデータから推定されたKp指数を示す。ここで、南北磁場強度は正が北向き、負が南向きを示す。Start Day: 2021/05/26電⼦フラックス図9テスト粒子を用いた動径方向拡散モデルの計算結果 横軸をL値、縦軸を約850 keVから1 MeVの電子フラックスとしている。図8で示しているKpの値から得られた拡散係数を用いている。1113-2 放射線帯粒子シミュレーション

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