能であることが特徴の一つである。VIPIR2とその先行機である「10C」との諸元比較を表1に示す。VIPIR2のマルチチャンネルを活用すると、これまでのイオノゾンデシステムでは不可能であった、電波の偏波モード分離や到来方向の推定などが可能となる。国内定常観測は、現在4観測所で行っている。そのうちの1観測所はNICT本部構内に位置する。NICT本部の住所は東京都小金井市に存在するが、交通機関や電話局の関係で国分寺市に依存する面が多く、観測所としては慣習的に「国分寺局」と呼ばれている[2]ため、本稿でも「国分寺局」と記す。国分寺局における観測機器の配置と概観を図1に示す。アンテナは(a) 送信用の高さ45メートルデルタアンテナ、(b) 受信用の高さ5メートル、長さ4メートルのダイポールアンテナ8基で、構内に図1(c)のように配置される。受信用のダイポールアンテナは、中央がクロスダイポールとなっており、それぞれの基線上にさらに3基ずつ配置されるアレイ構成である。(d)「観測棟」には各観測機材が配置され、それらは送信機・受信機・リファレンスなどのユニット化された各機器により構成される。国分寺局以外の3観測所は、北海道天塩郡豊富町のサロベツ観測施設、鹿児島指宿市山川の山川観測施設、沖縄県国頭郡大宜味村の大宜味観測施設に位置する。観測施設の位置を図2(a)の赤丸で示し、(b)、 (c)、 (d)と(e)にそれぞれの観測施設における送信アンテナ・受信アンテナアレイ、「観測棟」の位置を示す。大宜味観測施設のみ、設置場所の都合上、送信所と受信所が600メートルほど離れた位置にある。本稿では、このようなVIPIR2について、2でその機能と、それを活用した観測例を示す。3では、VIPIR2の最大の強みであるモード分離機能と、近年技術発展の著しい機械学習の技術を用いた、イオノグラムの自動読み取り手法の改善について紹介する。最後に4で今後の展望について述べる。VIPIR2の概要とそれを活用した観測結果 2.1電波モード分離図3に(a)VIPIR2及び(b)10Cによって同時観測されたイオノグラムの例を示す。両者ともに高度100km付近にE層が、高度230kmから400kmにかけてF層が観測されている。一般に電波は、電離大気と磁場のある空間を伝搬する際、複数の伝搬モードを持つ。電離圏を伝搬する電波の場合も同様で、地球磁2図1 国内定常イオノゾンデ観測「国分寺局」の様子(c)にNICT小金井本部構内における各機器の設置図、(a), (b), (d)にそれぞれ送信アンテナ、受信アンテナ、各観測ユニットの様子を示す表1 VIPIR2と10Cの諸元比較6 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究
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