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まえがきオーロラは、宇宙天気の乱れに伴い発生する超高層大気の発光現象である。最近では宇宙飛行士等によって宇宙から撮影された地球を覆う美しいオーロラの写真がSNS等に投稿されているのを見る機会も増えた。もちろんオーロラは、宇宙へ行かずとも地上や飛行機からも(天候が良ければ)観測可能であり、宇宙天気予報センターにはオーロラ観測を目的とした人々から通年多くの問い合わせがある。オーロラが観測可能な地域は、磁気緯度67度付近の「オーロラ帯」と呼ばれる磁極を取り巻く地域である。北半球のオーロラ帯は、カナダ・アラスカ・シベリア・北欧などの地域を含む。文献[2]によるとオーロラ帯は年間に80〜100日程度オーロラが観測される地域として定義されている。しかしながらオーロラ帯に滞在していても、一晩に見えるオーロラの明るさや形状は時々刻々変化する。全く見えないこともあれば、雲との見分けが難しい程度にぼんやりとしたオーロラ(ディフューズオーロラ)が現れることや、明るく鮮明なアーク・カーテン形状のオーロラ(ディスクリートオーロラ)が見えることもある。また、ディスクリートオーロラの一部が増光し、数十分程度で急激にオーロラが夜空一面に広がり、その後数時間にわたり頭上全域で踊る様に光り輝くオーロラが発生することもある。これはオーロラ爆発と呼ばれる現象であり、太陽と地球の相互作用によって突発的に発生する自然現象である[3]。オーロラ爆発は非常に神秘的な光景であり、その発生機構は未だ解明されていない部分も多く、世界中の科学者が取り組む研究課題である。この現象に出会うことができれば、それは生涯の思い出になるかもしれない。オーロラの明るさオーロラは、磁気圏から電離圏へ降下したプラズマが超高層大気に衝突した時に発生する大気の励起光である。主成分は電子であるため、電流として考えると電離圏から磁気圏に向かって流れる沿磁力線電流の電離圏側で発生する現象である。オーロラの発生に伴い電離圏に水平電流(オーロラジェット電流)が流れると地上では強い磁場変動が観測される。オーロラは高度数百 kmに出現する現象であり、出現していても雲などにより天候によっては地上からは観測できないことがある。そこで、オーロラアラートでは天候に作用されずに観測可能な地磁気変動(AL指数)をオーロラの活動度の指標としてモニタしている。AL指数は、京都大学地磁気世界資料解析センターが準リアルタイムで算出しているAuroral Electrojet(AE)指数の一種であり、オーロラ帯全域の地磁気の水平成分の最大減少値を示す[4]。図1はオーロラ発光強度(緑線)とAL指数(黒線)の時間変化を示す。これは2001年12月12日の夜間に米国アラスカ州フェアバンクス近郊のアラスカ大学ポー12夜空を覆うオーロラは、目に見えない宇宙嵐の発生を大気に映し出す鏡と言われている。宇宙天気予報研究の一環としてオーロラ予報システムを開発し、2012年よりウェブサイト「オーロラアラート」から今後の出現予報を公開している[1]。本稿では、ウェブサイトで公開しているアラートレベルの定義、レベルごとのオーロラの出現率、予報手法、予報精度についてまとめる。Aurora forecast system has been developed as a part of space weather forecast services, and it has been in operation as “Aurora Alert” on web since 2012[1]. This paper summarizes the defini-tion of the alert levels, appearance rates of aurora for each level, forecasting methods, and forecast-ing accuracy.3-4 オーロラ予報「オーロラ・アラート」3-4Aurora Forecast – Aurora Alert –坂口歌織SAKAGUCHI Kaori1233 磁気圏研究

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