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場の影響を受けない伝搬モードの電波「正常波」及び地球磁場の影響を受ける伝搬モードの電波「異常波」が混在する。正常波と異常波はそれぞれ偏波の旋回方向が異なるため、VIPIR2の直交アンテナで受信された電波の位相解析を行うことで、両者の分離が可能である。その結果を示したものが図3(a)で、赤色と緑色でそれぞれ正常波と異常波の信号強度を示している。一方、VIPIR2の先行機である10Cでは1チャンネル受信による運用であったため、正常波と異常波を区別することが不可能で、図3(b)では、受信された信号強度の情報のみを色で示している。一般に、地球磁場の影響を受けない正常波の方が、地球磁場の影響を受ける異常波よりも利用しやすいため、正常波と異常波が混在している図3(b)よりも正常波のみが自動で抽出できる図3(a)の方が活用しやすい。2.2電離圏の短周期変動観測イオノゾンデの定常観測が始まった当初は手動での観測であったこともあり、1時間に1回の頻度であった。しかし、1950年代に自動観測が可能となると頻度の高い観測が可能となり、一部の特別観測期間を除き、原則15分ごとの観測を運用していた。国内で運用する4観測所(1993年までは5観測所)全ての観測点で混信を起こさないために、図4(a)のようにそれぞれの観測点で75秒ずつ時間をずらして観測を実施していた。なお、各時刻の観測時、送信局は、送信・受信と同一局で行う「鉛直観測」(いわゆる通常の「イオノゾンデ観測」)を行うが、送信局以外の3局については、受信のみを行う「斜入射観測」を行っている。図4で、鉛直観測は赤色で、斜入射観測は青色で示した。送信所と受信所の中間の電離圏を観測していると解釈でき、その観測場所は図2(a)の青丸で示す位置である。電離圏は太陽の活動や地磁気の活動によって変動を受けるほか、太陽天頂角の変化や、電離圏内の大部分を占める中性大気のダイナミクスや下層大気からの影響も受け、日々刻刻と変動している。数時間周期の変動に加え、数十分、数分周期の変動も頻発することが知られており、より短周期な電離圏変動を定常的に捉えるためには、より頻度の高い観測が必要である。そこで、電離圏のより短周期な変動を検出するため、図3 (a)VIPIR2及び(b)10Cによって同時観測されたイオノグラム2016年10月1日16:30JST、国分寺における観測例図2 国内定常イオノゾンデ観測所の配置図と地方観測施設内の各機器の配置図(a)に各観測点の場所(赤丸)及び斜入射観測時の観測点(青丸)を示す。(a),(b), (c), (d), (e)はそれぞれ、サロベツ電波観測施設、山川電波観測施設、大宜味電波観測施設、大宜味大気観測施設の様子72-1 VIPIR2による国内電離圏定常観測

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