カーフラットリサーチレンジ(PFRR)の全天分光イメージャ[5]で観測された波長557.7 nmの酸素原子の発光強度の時間変化である(360度の視野のうち天頂角30度以上の平均発光強度を示す)。オーロラ発光強度の増加と同時にAL指数の絶対値が増大しており、AL指数がオーロラの明るさの尺度として利用できることが分かる。画像は各時間の全天の様子であり、オーロラ爆発(aurora breakup)発生中は視野全体にオーロラが広がっている。オーロラの光の源は超高層大気に存在する原子・分子・イオンの励起光であり、複数の輝線が発光した場合は、その重ね合わせにより色味の変化を示す。可視オーロラの代表的な発光輝線は、酸素原子の緑色(OI 557.7 nm)と赤色(OI 630.0 nm)、窒素分子イオンの青色(N2+ 1NG 427.8 nm)である。表1は、AL指数(絶対値の10分平均値)の各範囲(100<|AL|、100≦|AL|< 300、300≦AL<500、500≦|AL|)に対する、オーロラの明るさの平均強度を示す。AL指数の絶対値が100 nT未満の場合は、緑・赤・青すべてのオーロラの明るさは平均1 kR以下である。これは、オーロラが上空に全く存在していない、または、存在していても見えないほど暗いということを意味する。つまり│AL│<100nTの条件はオーロラの観測には適していないことを表す。AL指数の絶対値が100 nT以上300 nT未満の範囲の場合、緑色のオーロラの明るさは平均3 kR程度である。これは肉眼で、ぼんやりしたオーロラが観測できる程度の明るさである。オーロラを見慣れていない場合は、雲との区別が難しいかもしれない。しかし、カメラ等で長時間露光撮影をすれば綺麗なオーロラ写真の撮影を楽しむことができるはずである。AL指数の絶対値が300 nT以上500 nT未満の範囲の場合、緑色のオーロラの明るさは平均5 kR、赤色のオーロラの明るさは平均1kRである。明るさの強度値は低いが、これは全天の平均値であるためで、空の一部に明るいオーロラの固まりが見られるはずである。例えば、図1の左端の画像のような明るいカーテン状のオーロラを観測できる可能性が高く、場合によっては赤色のオーロラも観測できるかもしれない。AL指数の絶対値が500 nT以上の場合、緑色のオーロラの明るさは平均10 kR、赤色のオーロラは平均2 kR、青色のオーロラは平均2kRである。三波長すべての輝線の明るさの平均値が1 kRを超え、図1の右から3つの画像のように空一面に、非常の明るいオーロラが観測できることが期待できる。オーロラアラートでは上記の、2001年から2002年の2年間のPFRRにおける観測による、AL指数と色ごとの明るさの関係に基づき、アラートレベルを以下図12001年12月12日07:00-13:00 UTのオーロラの明るさ(緑)とAL指数(黒)の時間変化 アラスカ大学フェアバンクス校PFRRの全天イメージャによる波長557.7 nmの観測値に基づく。画像は各時間のオーロラの様子。表1 オーロラ予報レベルの基準3 磁気圏研究124 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)
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