について述べる。次に関東周辺でのGICの測定結果とその原因となった地磁気じょう乱についての分析及びGICの原因となった地磁気じょう乱について柿岡地磁気観測所(以下、柿岡という)から1分値の地磁気数値データが提供されている1956年以降の過去約65年の期間の中で最も大きな現象について述べる。GICの測定2.1GIC測定装置GIC測定装置は、電流を測定するための電流プローブと測定されたデータを記録するデータロガーを組み合わせた構成が一般的である。稼働中の電力システムに影響を与えないで変圧器中性点のアース線に流れる電流を測定する必要があるため、アース線を挟んで測定を行うクランプ型の電流プローブが使用される。変圧器のアース線には金属の棒や平板プレートなどが使われるため、大きなクランプ径を持つものが必要となる。クランプ型の電流プローブでは、アース線に流れる電流によって生じる磁場を測ることによって電流を測定する。磁気センサとしては、ホール素子、フラックスゲート型磁気検出素子、変流器(CT検出)方式などが使われる。フラックスゲート型磁気検出素子は、ホール素子を用いたものに比べて温度安定性がよいという特長を持っている。ホール素子を用いた電流プローブを使用する場合は、補正ができるように温度の測定を一緒に行う例もある[17]。GIC測定装置のブロック図を図2に、電流プローブ(日置社製CT6845)の写真を図3に示す。この電流プローブは、磁気センサとして微小電流の検出にフラックスゲート型磁気検出素子、大きな電流の検出に変流器(CT検出)方式を用いて、大きなダイナミックレンジと広い周波数特性を持たせている[19]。変圧器中性点のアース線に流れる電流に比例する電流プローブからの出力電圧をデータロガー(テラテクニカ社製DCA323)の32ビットのADコンバーターで10Hzサンプリングして記録し、モバイルルータを用いたインターネット接続により記録されたデータを取得している。他のデータとの比較の際にデータ間の時刻ずれが生じないようにデータの時刻精度を保つため、GPS(Global Positioning System)衛星からの時刻情報を受信してデータロガーの時計を合わせている[20]。測定装置のスペックとして、まず、GICの速い変動を捉えるためのデータのサンプリング周波数の検討が必要となる。可能な限り速いサンプリングが望ましいが、データ量との兼ね合いもあるため、最適なサンプリング周波数の検討が必要である。GICの大きな変動をもたらす大振幅かつ速い地磁気変動として、惑星間空間衝撃波の到来に伴うSSC(Storm Sudden Com-mencement)あるいはSI(Sudden Impulse)と呼ばれる急激な地磁気変動がある[21]。1991年3月24日のSSCの際には、継続時間が1分以下で振幅が202 nTの非常にシャープで大きな振幅を持つ地磁気変動が柿岡で観測されたことが報告されている[22]。この現象に対応して米国のニューヨークの近くの変電所で130 AのGICが測定されている[21]。また、このSSCで始まった磁気嵐ではカナダの電力会社ハイドロケベックの変電所で100 Aを超えるGICが測定されており、GICによる変圧器保護リレーの動作があったことが報告されている[6]。図4に2000年7月15日14時36分UTに発生したSSCの際に柿岡で観測された電場の南北(X)成分と東西(Y)成分の0.1秒値とその直流分を差し引いた変動分の累積割合の周波数スペクトルを示す。このSSCの際に柿岡で観測された地磁気水平成分の最大振幅は140 nTで、その時間変化率は最大89 nT/分であった。このSSCで始まった磁気嵐では、米国の数か所の変電所で送電効率を調整するためのコンデンサバンクの保2クランプタイプ電流プローブデータロガーバッテリースイッチングHUBモバイルルータGPSアンテナUPSデータロガーボックスセンサユニットセンサボックス変圧器アース線アンテナ図2 GIC測定装置のブロック図図3 電流プローブの写真130 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)3 磁気圏研究
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