護リレーが動作したことが報告されている[21]。図4の累積周波数スペクトルによると1Hz以上の周波数成分が1~2.5%程度あり、GICの最悪値を得るために変化のピーク値を捉えるためには、1秒程度のサンプリングが望ましいことがわかる。次に、電力網の構成も含めたGICの評価を行うためには、対向する変電所間を結ぶ送電線をカバーする多数の観測点を設けてGICの流入や流出を観測することが望ましい。流入や流出を評価するためには、GICの極性の観測が必要である。GICの流入点あるいは流出点となるような電力網の端点で観測を行うことにより、大きなGICを観測することができる(端点効果という[23])。さらに、GICの観測データ間あるいは地磁気や電場のデータとの比較を行うためには、データ間の時刻ずれを無くすため、データの時刻精度を保つ必要がある。GPS衛星からの時刻情報を受信することにより、スタンドアロンで測定装置の時計を合わせることができる。観測装置を設置する変電所は人里離れた山中にあることも多く、記録されたデータを取得する方法も検討する必要がある。一つの方法として、携帯電話回線を用いたインターネット接続の利用がある。インターネット接続を行うと準リアルタイムで観測データを取得することが可能となり、観測装置のデータ記録容量によるサンプルレートの制約を軽減することができるとともにGICの現況を準リアルタイムでモニタすることができる。また、観測装置に問題が発生した場合に、観測装置のステータス情報取得や再起動を遠隔からできるようになる。最後に、大きな磁気嵐による影響など様々な地磁気変動に対するGICをとらえるためには、長期間のGIC観測が必要である。2.2測定場所関東周辺の変電所の500kV網の変圧器に測定装置を設置してGICの測定を実施している。図5に測定装置を設置した変電所及び柿岡(KAK)の位置を示す。太線は測定装置を設置した変電所に隣接する変電所の間を結ぶ500kVの送電線を示す。500kVの送電線は日本では一番高い電圧の送電網で、送電電圧が高いほど抵抗の小さい送電線を使用しているため、大きなGICが測定されること期待される。2016年2月よりSFJ及びSTB、2017年2月よりSFS、2021年2月よりSKGで測定を開始した。2021年5月現在、測定を継続している[20]。GICの測定例測定を開始した2017年から2020年にかけては太陽活動サイクル24の極小期にあたるため、Dst指数(速報値)が-100 nTを下回るような磁気嵐の発生は3件と少なかったものの、磁気嵐、惑星間空間衝撃波の到来に伴うSSC/SI、高緯度のオーロラ活動に伴う地磁気じょう乱(以下、湾型じょう乱という)、太陽フレアによって電離圏伝導度が急増することによる地磁気じょう乱(以下、SFE(solar flare effect)という)によるGICが観測された[20]。太陽活動の極小期ではあるが、湾型じょう乱に伴うGICが比較的多く観測されている。3図42000年7月15日のSSC現象に伴う柿岡の電場の南北(X)成分と東西(Y)成分の0.1秒値とその直流分を差し引いた変動分の累積割合の周波数スペクトル図5 GIC測定装置の設置場所と500 kV電力線1313-5 地磁気誘導電流(GIC)の測定
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