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の湾型じょう乱によりGICが引き起こされたものである。湾型じょう乱によるGICは比較的頻繁に観測されている。1956年以降に柿岡で観測された最大の湾型じょう乱は、2004年11月9日11時4分UTに発生したものである。図11にこの湾型じょう乱時の磁場変動とその時間変化率を示す。地磁気水平成分変化の最大振幅は95nTで、その時間変化率は最大で-4.7nT/分とそれほど大きくないが、中規模の磁気嵐に相当する地磁気の変化を示している。3.4SFEに伴うGIC2017年4月1日に発生したM4.4/1Fフレアによる地磁気変動に伴う観測データを図12に示す。上から順にGOES衛星で観測された太陽のX線フラックス、SFJ及びSTBでのGIC測定データ、柿岡での地磁気変動(X成分とY成分)と電場変動(X成分とY成分)を示している。21時25分UT頃にフレアによるX線放射の増加が始まり、これに対応して地磁気の変動が起こっている。フレアによるX線放射が最大となる21時48分UT頃に地磁気X成分の変動も最大となっている。この地磁気の変動に伴ってGICの増加がSFJとSTBで観測されている。1956年以降に柿岡で観測された最大のSFEは、1960年11月15日2時2分UTに発生した光学観測によるフレアの面積と明るさから決められるフレアの規模(光学重要度)が最も大きい3Bのフレアに伴うものである。図13にこのSFEに伴う地磁気水平成分の変動とその時間変化率を示す。このSFEによる柿岡の地磁気水平成分変化の最大振幅は-67nTで、その時間変化率は最大で-20nT/分であった。この現象は、太陽フレアのX線放射により大きなGICが発生する可能性を示唆している。まとめ電力システムへの宇宙天気による影響を評価するため、関東周辺の数か所の変電所に測定装置を設置し、GICの測定を2017年2月から実施している。これまでの測定は太陽活動サイクル24の極小期であったため、大きなGICは観測されなかったが、磁気嵐、惑星間空間衝撃波の到来、高緯度域のオーロラ活動、太陽フレアに伴うGICが観測された。これらの観測データは、磁気圏界面電流、環電流、沿磁力線電流などの磁気圏電流や電離圏電流によりGICが引き起こされていることを示唆している。今後、2025年頃と予測される太陽活動サイクル25の極大に向けてGICの計測を継続して長期的なデータの蓄積を行い、その影響評価を行っていく予定である。謝辞GIC測定装置の設置にご協力いただいた(株)東京電力パワーグリッドに感謝します。また、現象リスト、地磁気及び電場データを提供いただいた気象庁地磁気観測所、地磁気指数を提供いただいた京都大学地磁気世界資料解析センターに感謝します。本研究は、科研費(15H05815)の助成を受けたものです。参考文献】【1V. D. Albertson, J. M. Thorson, Jr., and S. A. Miske, Jr., “The effect of geomagnetic storms on electrical power system,” IEEE Trans. on Power Apparatus and systems, vol.PAS-93, no.4, pp.1031–1044, 1974. DOI:10.1109/TPAS.1974.2940472S. -I. Akasofu and R. P. Merritt, “Electric currents in power transmission line induced by auroral activity,” Nature, vol.279, pp.308–310, 1979. DOI:10.1038/279308a03D. H. Boteler, T. Watanabe, R. M. Shier, and R. E., Horita, “Character-istics of geomagnetically induced currents in the B. C. Hydro 500 kV system,” IEEE Trans. on Power Apparatus and systems, vol.PAS-101, no.6, pp.1447–1456, 1982. DOI:10.1109/TPAS.1982.3171924R. Pirjola, “Induction in power transmission lines during geomagnetic disturbances,” Space Sci. Rev., vol.32, no.2, pp.185–193, 1983. DOI:10.1007/BF002422435R. Pirjola, “Effects of space weather on high-latitude ground sys-tems,” Advance Space Res., vol.36, no.12, pp.2231–2240, 2005. DOI:10.1016.j.asr.2003.04.0746L. Bolduc, “GIC observations and studies in the Hydro-Quebec power system,” J. Atmos. and Solar-Terrestrial Phys., vol.64, no.16, pp.1793–1802, 2002. DOI:S1364-6826(02)00128-17A. Pulkkinen, S. Lindahl, A. Viljanen, and R. Pirjola, “Geomagnetic storm of 29-31 October 2003: Geomagnetically induced currents and their relation to problems in the Swedish high-voltage power transmission system,” Space Weather, vol.3, no.8, S08C03, 2005. DOI:10.1029/2004SW0001238A. Pulkkinen, E. Bernabeu, J. Eichner, C. Beggan, and A. W. P. Thomson, “Generation of 100-year geomagnetically induced current scenarios,” Space Weather, vol.10, no.4, pp.1–19, 2012. DOI:10.1029/2011SW0007509C. M. Ngwira, A. Pulkkinen, F. D. Wilder, and G. Crowley, “Extended study of extreme geoelectric field event scenarios for geomagnetically induced current applications,” Space Weather, vol.11, no.2, pp.121–131, 2013. DOI:10.1002/swe.200214図13 1960年11月15日の大きなSFEによる柿岡の地磁気水平成分の変動とその時間変化率134   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)3 磁気圏研究

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