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位置と角度の幅を測定することで、伝搬速度・広がり・方位角を測定する。図4に2017年9月4日のCMEの測定した結果を例として示す。(a-f)のように、各画像で最も太陽中心から離れた先端を記録する。図4(g)にあるように各画像での先端の距離を時系列に並べると先端が広がっていく様子をみることができ、放出された伝搬速度を求めることができる。ちなみにグラフの記号の色は、画面上でどの方角に先端が伝搬しているかの方位(position angle: PA)を示している。CMEの測定を終えた後、CMEと対応する太陽フレアを選択する。まえがきに記述したとおり、太陽フレアを伴うCMEのみを影響予測の対象とする。そのため、対応するフレアとCMEのペアを決めるために、図4(h)のように、フレアとCMEの発生時刻を対比させ、発生時刻と方角の近いフレアクラスの大きいものをムービー等のデータを確認しながら決定する。このように太陽フレアとCMEの観測データを組み合わせることで、発生位置・発生時刻・伝搬速度・CMEの広がり・エネルギー規模などを特定することができるが、CMEのフラックスロープの向き・ねじれの向きなど観測から特定が難しいパラメータも存在する。また、フレア領域から動径方向にまっすぐ外に伝搬せずに逸れて伝搬するケースも存在する。これらの不定性がある情報で予測シミュレーションを行うため、入力CMEのパラメータを変えた複数のケースを並列実行するアンサンブル予測を行うシステムを構築した。アンサンブルシミュレーション結果の一例図5に2017年9月初旬に発生したCMEのアンサンブルシミュレーション結果を示す。2017年9月初旬に活発な活動を示した活動領域NOAA12673では27回のMクラスフレアと第24太陽活動周期で最大規模のX9.3フレアを含む4回のXクラスフレアが発生したが、そのうち大規模なCMEを伴ったものは図5(a)に示した5例であった。9月4日20:33UTのM5.5フレアに伴うCMEによる衝撃波が9月6日23:47UTに到来、X9.3フレアに伴うCMEの衝撃波が、9月7日23:02UTに到来した図5(c)。M5.5フレアに伴うCMEによる南向き磁場が9月7日20:00UT頃から通過し始めたが、前述の後続CMEの衝撃波がその通過の最中に到来し、南向き磁場が強く圧縮され30nT近くになり(図5(d))、この結果地磁気嵐が発生した(図5(b))。シミュレーションでは、M5.5フレア-CMEとX9.3フレア-CMEの2つのCME(先行CME、 後続CMEと呼ぶ)のパラメータを大きく変化させてアンサンブルシミュレーションを実行した。その結果を図5に示す。今回は予測ではなく既にあるDSCOVRの観測を参考にパラメータの変更の影響を調査した。まず、CMEの速度や磁束量を大きくすると衝撃波及びフラックスロープの到来時刻が早くなり、その影響は後続CMEの背景場を変えることでその到来時刻も早めてしまう。先行CMEと後続CMEの両方のパ3図4(a-f)SoHO衛星LASCOで観測された2017年9月4日のCME 画像は差分画像。直線、円弧は、本システムを用いた測定結果。(g)9月4日のCMEの測定結果の軌道。横軸が時刻、縦軸が太陽中心からの距離。(h)9月3-11日の期間に発生したCMEと対応するフレアを選択した結果。三角がフレアのピークの時刻、大きさがフレアクラスを示す。記号の色が太陽面中心からの方位(PA)を示す。図5(a) 2017年9月4-11日のGOES衛星X線の時系列データ 矢印がCMEの発生タイミング。(b)地磁気変動を示すDst指数の時系列データ。(c,d)太陽風その場観測(黒線)とSUSANOO-CMEでの地球に到来する太陽風(色線)の比較。(c)が太陽風速度、(d)磁場の南北成分。140   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)4 太陽・太陽風研究

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