CHと高速風領域の関係が明らかになっている。図5はL1点での太陽風速度(上段シミュレーション、中段DSCOVRによる観測データ)と地磁気じょう乱の重要度を示すローカルな地磁気K指数(下段)である。K指数の黄色や赤い棒は地球の地磁気水平成分にじょう乱があったことを示している。黄色い半透明部分は高速太陽風領域でA、B、Cのラベルを付けたCHに対応している。青い半透明部分はCME通過によるもので、これについては本研究では扱わない。灰色の半透明部分は観測データでは高速風が来ているが、シミュレーションでは見られない領域である。図4ではラベルXのCHから出た磁力線は高緯度へ行っており、地球軌道に達していない。この差異は磁力線の形状を示すexpansion factorの評価による可能性がある。また興味深いのはラベルCのCHと高速風である。L1点で中程度の速度の太陽風が観測されており、またシミュレーションでもそれに対応するCHと高速風が見られるが、SDOの画像データではCHの確認が困難になっている。このようにSDOからでは予測できないが、L1点での高速風の原因をシミュレーションから推測することができる。図6と7は運用中のシミュレーション結果を示すWeb page 画面である。2018年6月16日のGONG磁場観測データを入力にして6月17日のCHと太陽風を予測している。図6左上は太陽コロナの温度のカラーマップで暗い部分がCHに相当する。左下はCHから発する磁力線であるが、開いていることが分かる。右上は太陽磁場の方向を色分けで示しており、赤はAway(太陽から地球方向)、青はToward(地球から太陽方向)でセクター構造と呼ばれている。円の周囲の数字は地球が位置する日を示す。右下二つは太陽風速度のカラーマップで、右端は地球軌道面、その左隣は太陽からL1点までの距離を半径とした球面上に投影したもので、上下が南北方向である。右上図と同様に数字は地球の位置を示している。図7はシミュレーションによるL1点での太陽風の密度、速度、温度、磁場強度と南成分のプロットで、水色のハッチ部分が6月17日の予測になっている。また検証のために該当するCHのSDO観測データとDSCOVRの太陽風観測データを図8(a)、(b)に示した。CHはおおよそ再現されており、またL1点での太陽風速度は期間によって定量的には過小評価、過大評価が見られるが定性的に図6運用モデルのシミュレーション結果。コロナの温度のカラーマップ(左上、下)、セクター構造(右上)、太陽風速度のカラーコンター(下段中、右)。左下図で、実線は磁力線を表し、赤はAway、青はToward。図8 (b)図7に対応するDSCOVR観測データ図8 (a)図6に対応するSDO AIA211の観測データ図7図6と同様、運用モデルのシミュレーション結果でL1点での太陽風のプロット図 上から密度、速度、温度、磁場強度と南北成分図5L1点での太陽風。上段二つがシミュレーション、中段二つがDSCOVR衛星による観測データ。最下段が柿岡地磁気観測所によるK指数。146 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)4 太陽・太陽風研究
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