に、ICRP 2007年勧告[23]に基づいた被ばく線量を計算する。WASAVIESはこれらの数値シミュレーションを一つに統合することで、太陽から放出された太陽放射線が地上に到来する間に起こる様々な過程を再現することで、物理現象を基にした太陽放射線による被ばく線量率の推定ができるモデルである。WASAVIESによる推定被ばく線量図4は、2005年1月20日に発生したX7.1フレアに伴うGLE(GLE69)時の、WASAVIESにより推定された一般的な航空機高度(高度12 km = 39,370ft)での全世界の被ばく線量率マップである。最も被ばく線量率が高かったと推定される6時55分UTCのマップを示す。極域での被ばく線量率が非常に大きくなっているのが良くわかる。この時の高度12kmでの最大被ばく線量率は、南極上空付近でおおよそ460μSv/h程度と推測される。これは、大規模太陽フレア発生前の同一高度、同一地点での被ばく線量率(すなわち高度12kmでの銀河宇宙線のみによる被ばく線量率)である約4μSv/hの115倍にも上る線量率である。被ばく線量率マップ上に描かれている5本の白曲線は、代表的な航空路を示している。WASAVIESでは、これらの航空路に沿った被ばく線量率も計算することが出来る。図5に一つの例として、東京(NRT)-ニューヨーク(JFK)の航空路に沿った、2005年1月20日6時55分UTCでの被ばく線量率を示す。この時刻にアラスカ上空40,000 ft(=12.2 km)を飛行していた場合、80μSv/hを超える線量率で被ばくしていたことがわかる。このGLE69時に、仮にWASAVIESを基にICAOのRadiation Advisoryを発信したとした時の、6時55分UTC、高度40,000 ftでのICAO Radiation Advisory mapを図6に示す。オレンジで示した部分はMODERATE、赤で示した部分がSEVEREの領域になり、両極域にSEREVEの領域が広がっているのがわかる。図7は、2017年9月10日に発生した、X8.2フレアに伴うGLE(GLE72)時の、高度12 kmでの被ばく線量率マップである[19]。両極域で若干の被ばく線量率の増加がみられるものの、GLE69と比較すると、被ばく線量率の増加は極めて少ないことがわかる。この違いの原因の一つとして、GLE72時には、直前に頻発したCMEが地球に到来したことによるフォーブッシュ減少により、バックグラウンドの銀河宇宙線のフラックスが減少していたことが考えられる。しかしながら、4図4 WASAVIESで推定したGLE69ピーク時における高度12 kmでの被ばく線量率マップ図5 WASAVIESで推定したGLE69ピーク時における東京(NRT)-ニューヨーク(JFK)航空路での被ばく線量率マップ図6 WASAVIESで推定した、GLE69ピーク時の高度40,000 ftにおけるICAO Radiation Advisoryマップ。ICAO Radiation Advisoryは緯度30度×経度15度のグリッドで評価される。図7 WASAVIESで推定したGLE72ピーク時における高度12 kmでの被ばく線量率マップ1614-4 太陽放射線被ばく警報システムWASAVIESの開発
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