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バックエンド4.1分光器諸元フロントエンドから送られてきたバンド1から3までの信号は、一旦サンプラインターフェイスに入り、分光器の入力形式にした後、分光器に送られる。分光器には、70 MHzから9 GHz帯をカバーするディジタルFFT分光器として、OCTAD-Sを新規に開発した。OCTAD-S分光器は、エレックス工業株式会社が開発・製造したOCTADを基に、FPGAへFFTのプロセスを組み込んで開発した分光器である。ADCは、10-bit、5 GHz。信号処理にはFPGAが採用され、ソフト面の変更にも柔軟に対応できる。ACDモジュールを含め、交換や増設などのメンテナンスも容易に行える設計となっている。帯域を分割した2種類の分光器からなり、サンプリングレートは2.048 GHzと4.096 GHz、チャンネル数は32,768と2,048、時間分解能は8ミリ秒である。信号の総帯域幅がサンプリング周波数の半分以下であることから、アンダーサンプル技術を用いることで、ヘテロダイン方式を用いることなく比較的簡易なシステムによって、マイクロ波帯まで直接分光している。4.2OCTAD-SOCTAD-Sは、エレックス工業株式会社が開発・製造したOCTAD (Optically Connected Transmission system for Analog to Digital Conversion)を基に、FPGAへFFTのプロセスを組み込んで開発した分光器(-S: Spectrometer)である。図9にはOCTAD-Sの筐きょう体たいと、内部に組み込んだADC及びFPGAの写真を示す。分光器は、2台のOCTAD-Sから構成されており、1.25 GHzのADCを2枚と4枚、Xilinx Virtex-7 (XC7VX485T)のFPGAチップを2枚と1枚、それぞれ搭載しており、2G64K及び4G4Kと名称し、区別している。また、表1にOCTAD-Sの仕様についてまとめる。4.3信号処理信号処理の概要を図10に示す。フロントエンドを経た信号はAD変換後、窓関数を掛けてからFFT処理される。この際の時間窓長は8ミリ秒で、track-and-holdサーキットを用いることで、デッドタイムのない処理を行っている。OCTAD-Sの分光処理の特徴として、アンダーサンプルがあり、詳細は次節に述べる。アンダーサンプルによって折り返されたFFTの結果は、その後のゲイン処理とフォーマットと整合により一連の周波数イメージとして整えられ、結果として10GHzまでの分光を可能とした。4.4アンダーサンプリング手法アンダーサンプリングの場合は入力信号周波数が高いため、通常のサンプリングよりも、サンプリングクロックの揺らぎ(ジッタ)によりAD変換後の値に揺ら42G64K4G4KADC動作周波数2.048 GHz4.096 GHz量⼦化ビット数10 bitSFDR〜42 dB〜40 dBGFDR〜37 dB〜38 dB最⼤⼊⼒電⼒0 dBmFPGA搭載数21周波数チャンネル327682048チェンネル幅31.25 kHz1 MHzスペクトルの分解能(-3dB)64 kHz2.0 MHzスペクトルの分解能(-9dB)90 kHz2.9 MHzアクイジション時間32μ秒1μ秒時間窓⻑8m秒積算回数2508000表1 OCTAD-S仕様図9 OCTAD-S(上)とADC(下左)及びFPGA(下右)図10 信号処理の概要168   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)4 太陽・太陽風研究

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