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更にノイズを取り除くため、収縮(Erosion)と膨張(Dilation)を行う。収縮では境界線が侵食されていく処理、膨張では白色の領域を増やす処理を行う。これらを組み合わせて、小さなノイズを消し大きな領域だけを残せる。⑨直線検出:Hough変換を用いて検出を行う。太陽観測データベースNICTで行われている太陽観測のデータは、NICT太陽観測データベースとしてウェブサイト(https://solarobs.nict.go.jp/)から広く一般に公開されている。以下に詳細を説明する。7.1 太陽電波観測データベース山川太陽電波観測システムによる観測データは、周波数帯域70 MHz–9 GHz、周波数分解能31.25 kHz(MHz帯)、1 MHz(GHz帯)、時間分解能8ミリ秒、右左旋両偏波の観測データである(詳細は2参照)。合計すると、1分間で約1.25 GByteのデータ量となり、夏至近くの一年で一番観測時間が長い時期には、1日で1 TByteのデータ量になる。そのため、この高分解能データすべてを広く一般に公開するのは現実的でなく、時間分解能1秒、周波数分解能1 MHzに間引いた低分解能データをウェブサイト上で公開している(図16)。データフォーマットは、天文学コミュニティーで広く使われているFITSとし、1つのデータファイルには、70 MHz–9 GHzの1時間分のダイナミックスペクトルデータが格納されている。右旋偏波及び左旋偏波の生データと、両偏波を合計した全電波強度から静穏太陽レベルを差し引いた、静穏太陽差し引き済みデータの3種類を公開している。データをダウンロードするためのウェブインターフェース(図16)では、必要なデータの日時を指定することで、当該時刻の静穏太陽差し引き済みデータのサムネイル画像が表示され、バースト等のイベントの発生を容易に確認することができる。そして表示されたサムネイルに該当する3種類のFITSファイルをダウンロードすることができ、詳細なイベント解析などを可能にしている。NICTでは、山川電波観測施設での太陽電波観測が開始された2016年以前は、平磯太陽観測施設(2016年閉鎖)において太陽電波観測が行われていた。この平磯における太陽電波観測システムHiRASの1996から2016年のデータも、同じNICT太陽観測データベースからFITSフォーマットで公開されている。さらに、国内で太陽電波のダイナミックスペクトル観測を行っている東北大学と協力し、NICT太陽観測データベースに東北大学のデータも取り込み、日本の太陽電波ダイナミックスペクトルデータの公開ハブとして機能できるようになっている。現在、東北大学のデータを取り込む作業を進めているところである。7図15 II型電波バーストの自動検出の概要 2015年11月4日3-4時(UTC)の山川太陽電波観測システムで取得されたデータを使用172   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)4 太陽・太陽風研究

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