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では手動読み取りや旧手法読み取りと大差はないが、旧手法の読み取りに失敗していた(b)及び(c)に読み取り結果の旧手法との差が顕著にみられる。図10に、図8の3例を含む、2019年9月1か月間に18:00JSTの大宜味で観測されたイオノグラムから読み取られた(a)foF2と(b)h’Fの読み取り値の比較を示す。黒線、青線、赤線で、それぞれ、手動読み取り値、旧自動読み取り値、新自動読み取り値を示す。灰色でハッチした(i)、 (ii)及び(ii)は、図8のイオノグラム(a)(d)、(b)(e)及び(c)(f)に対応する。図10(a)に示すfoF2は、旧自動読み取り値は、手動読み取り値とおおむね一致するものの、(ii)のように値が乖かい離りしたり、(iii)のように読み取りに失敗したりする例もある。一方、新自動手法のfoF2は手動読み取りのそれとおおむね一致する。図10(b)に示すh’Fには、さらに新自動読み取り手法による改善が顕著にみられる。旧自動読み取り手法では、大部分の日で読み取りに失 敗している一方、新手法では10-20kmの誤差範囲で一致することがわかる。次に、これらの結果を統計的・定量的に評価していく。統計的に評価をする方法はいくつもあるが、ここでは読み取りの成功率を評価するための「成功率」及び読み取りを成功したパラメータの精度を評価するための「誤差」に注目する。まず「成功率」を見ていく。あるイオノグラムにF層が存在し、例えばfoF2等のパラメータが存在する場合を「陽性(positive)」、スポラディックE層などにマスクされてF層が見えずにfoF2等のパラメータが存在しない場合を「陰性(negative)」と定義する。例えば、図8に示したイオノグラムのF層パラメータは全て「陽性(positive)」である。しかし、この「陽性」全てを自動読み取りで認識できるとは限らない。パラメータの陽性・陰性と自動読み取り値の成功・失敗は、以下の4通りに分類できる。 •「陽性」で自動読み取りでも読み取れる場合:「真陽性(True Positive)」 •「陽性」だが、自動読み取りに失敗する場合:「偽陰性(False Negative)」 •「陰性」にも関わらず自動読み取りしてしまう場合:「擬陽性(False Positive)」 •「陰性」で、自動読み取りで読み取れない場合:「真陰性(True Negative)」例えばfoF2については、図8の(c)以外の5事例は、「真陽性」、図8の(c)は「偽陰性」である。また、h’Fについては、図8の(b)と(c)は「偽陰性」でそれ以外は「真陽性」となる。2019年1年間の大宜味における正時に観測されたイオノグラムの全てを、TP、FN、TN、FPの4通りに分類し、その数を2×2の表、いわゆる「混同行列」にまとめたものが表2である。(a)と(b)がfoF2、(c)と(d)がh’Fに関するもので、(a)と(c)は旧自動読み取りについて、(b)と(d)は新自動読み取りについてである。(a)と(b)及び(c)と(d)を比較す図11 foF2及びh’Fの手動読取り値と自動読み取り値の誤差累積分布 旧自動読み取り値のものを青色で、新自動読み取り値のものを赤色で示す。図10 大宜味18JST、2019年9月1か月分における(a)foF2, (b)h’Fの手動読取り、自動読取り値比較(i), (ii), (iii)は図8の(a)/(d), (b)/(e), (c)/(f)のイオノグラムに対応する。12   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究

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