した際にも、宇宙天気予報業務が継続できることが必要であると認識され、2019年3月、宇宙天気予報センター副局をNICT未来ICT研究所(神戸市)に開設した(図 7)。現状は無人での運用であるが、NICT本部の災害の際に副局で予報業務を行うことができるように宇宙天気予報業務システムやイベント自動通報システム(後述)が、宇宙天気予報センター主局と神戸副局の間で冗長化されて設置されている。これらのシステムは、NICTの研究系ネットワークがダウンした際にも情報収集、配信ができるように、NICTのネットワークとは切り離された独立のネットワークで構成されている。災害の際の副局での宇宙天気予報業務に実施のために、年に何度か副局での予報業務を実践している。2017年9月の大規模宇宙天気現象時に、メディアをはじめとして一般の方々も含む様々な方々から昼夜を問わず問合せ等があったことを受けて、宇宙天気予報業務の24時間運用の必要性が改めて認識され、2019年12月から宇宙天気予報業務の24時間運用が開始された。これに伴い、これまでワーキングアワーのみであった宇宙天気現象発生の監視を24時間365日実施することができるようになり、大規模現象発生時の迅速な情報発信等が可能になった。また、これまで一日一回であった定期的な宇宙天気情報日報を一日2回(朝10時頃と夜10時頃)に増やすなど、情報発信も充実している。また、宇宙天気予報センター公式のウェブサイト(swc.nict.go.jp)も全面リニューアルし、わかりやすい情報発信を進めている。また、GPSの測位精度がかなり悪くなるなどの宇宙天気災害の発生が、国家レベルでの宇宙天気予報業務の重要性の認識につながり、2019年6月から宇宙天気予報業務は総務省委託業務としてNICTが請け負う形となり、実質的に総務省の業務として行われることになった。一方で、国際活動に目を転じると、2019年11月7日、国際連合の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)において、民間航空機の運航に際し宇宙天気情報の利用が開始された。ICAOでは、主に次の三つの観点から民間航空機の運航における宇宙天気情報の重要性を認識している。第1に航空機と地上管制との短波通信障害、衛星通信障害の回避のため、第2に電子航法に関連した航空機位置の測定誤差増大の影響を防ぐため、第3に航空機乗務員の宇宙放射線被ばくの低減のためである。宇宙天気情報を発信する機関(ICAO宇宙天気センターと呼ぶ)には、2018年1~3月に国際連合の専門機関である世界気象機関(WMO)によって行われた査察を経て、米国(SWPC)、欧州連合(PECASUS)、日豪仏加連合(ACFJ)、中露連合(CRC)の4つの組織がICAOから指名されている。NICTはACFJの一員としてICAO宇宙天気センターの一翼を担っており、2019年11月7日に航空機運航に特化した宇宙天気情報サービスを開始した。NICT宇宙天気予報に関する国際活動については本特集号5-3宇宙天気の国際動向[14]を参照されたい。情報通信研究機構における宇宙天気予報業務の詳細 現在のNICTにおける宇宙天気予報業務は、予報・警報の範囲をさらに広げ、短波通信障害や衛星測位の誤差増大の原因となり得る太陽活動、地磁気じょう乱、電離圏じょう乱などの情報以外に、人工衛星障害を引き起こす放射線帯電子の量や、宇宙飛行士や航空機の乗員乗客の被ばくの原因となり得るプロトン現象など、多岐にわたる情報を発信している[15](図8)。2021年現在、NICTが実施している宇宙天気予報業務を大別すると、1.宇宙天気予報の判断材料となる観測データや数値計算結果のHP上での提供、2.NICTの研究者及び予報官の合議によって決定される宇宙天気予報の配信・公開、3.突発的な宇宙天気現象が発生した際に自動配信されるイベント通報サービス、これら三つが挙げられる。3.1観測データや数値計算結果の公開宇宙天気予報を行う上で、太陽・地球間の環境のリアルタイム観測データは宇宙天気の現況を把握する上で非常に重要である。NICTでは、自ら所有する施設・観測装置におけるデータ取得のみならず、世界各地や人工衛星による観測結果を常時取得し、現状把握を行っている。表 1及び表 2に宇宙天気予報センターで予報のために扱っているデータの一覧を示す。多岐にわたる観測・数値計算データを用いている。また、衛3図7 予報センター神戸副局1815-1 宇宙天気予報業務
元のページ ../index.html#187