星観測によるデータ取得及び数値計算による宇宙天気予測が大きなウェイトを占めている。3.2宇宙天気予報の配信・公開発令される予報の判断は、収集された多岐にわたるデータを分析することによってなされる。予報は、図9に示されるように、太陽・太陽風・磁気圏・電離圏の領域ごとにレベル分けがなされ、各領域が静穏か活発か一目で判別できるようになっている*9。また1日2回、日報という形で宇宙天気情報を配信及び公開しており、毎週1回の週報配信、イベント発生時に配信される臨時情報、海外の宇宙天気予報を行う機関とのUGEOAコード(符丁化された宇宙天気予報情報[21])の送受信による情報交換と併せて、宇宙天気予報業務の根幹をなしている。以下に、各領域においてどのような判断基準で予報が行われるかについて述べる。3.2.1太陽領域―太陽フレア太陽フレアは太陽表面における大規模な爆発現象であり、デリンジャー現象やCME(コロナ質量放出現象と呼ばれる大規模な噴出現象)の原因となるため、宇宙天気予報においては予報判断の最上流に位置する現象である。太陽フレアは、放射されるX線強度(波長1-8Å)の最大値をもって規模が小さい順にA, B, C, M, Xとクラス分けがなされており(表3)、予報時点から24時間後までにCクラス以上の太陽フレアが発生しないと予測される場合は「静穏」、Cクラス、Mクラス、Xクラスの太陽フレアが発生すると予測される場合はそれぞれ「やや活発」、「活発」、「非常に活発」と予報される。太陽フレアの発生予測には主に太陽表面の磁場データや極端紫外線データが用いられる。NASAの太陽観測衛星であるSDOは、太陽活動領域と呼ばれる磁場が強く活動的な領域の3次元磁場データを取得しており、磁力線に蓄えられたエネルギーの見積もりから、発生する太陽フレアのクラスを推定することができる。極端紫外における活動領域の増光現象は、フレア発生の前兆として用いることができ、また衛星観測による昼夜や天候に左右されない連続観測、さらには地球からは観測不能な太陽の裏側の観測データにより、新たに出現する活動領域をいち早くとらえることができる。さらにここ数年、深層学習による太陽フレア発生予測[16]が行われ、太陽フレアの発生確率を定量的に求めることが可能となり、予報の裏付けとして用いられている。3.2.2太陽領域―プロトン現象プロトン現象、いわゆる太陽高エネルギー現象とは、太陽フレア発生に伴って数十keV-数百 MeVの高エネルギープロトンが生成され、30分~数時間で地球に到来して静止軌道で高エネルギープロトン粒子フラックスの増加が観測される現象である。プロトン現象で観測される高エネルギープロトンは太陽フレアやCMEの衝撃波面によって加速される。プロトン現象は人工衛星の電子機器に誤作動を生じさせ、宇宙飛行士や高高度を飛行中の航空機の被ばくの要因となる。また、極域に飛び込んだ高エネルギー粒子は電離圏を予測されるX線強度最大値(波長1-8Å)(Watts/m2)太陽フレアのクラス太陽フレア予報レベル10-8 – 10-7A1:静穏10-7 – 10-6B10-6 – 10-5C2:やや活発10-5 – 10-4M3:活発10-4 X4:非常に活発表3 太陽フレアのクラスと予報レベル図9 予報センターウェブサイトにて公開される予報インジケータ*9https://swc.nict.go.jp184 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)5 定常業務
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