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いるが、それ以外に多カテゴリーReliability dia-gram[16]、多カテゴリーROC解析[17]などがある。しかし、多カテゴリーの予報評価手法は、2カテゴリーの予報評価手法に比べると発展途上であり、今後更なる研究が必要である。4カテゴリー太陽フレア予報の評価については、[6]に簡単に述べられているのでそちらを参照されたい。最後に、今後のNICT宇宙天気予報の方向性について簡単に述べて、本稿のまとめにする。NICTの宇宙天気予報は、長年にわたり決定論的予報を行ってきた。しかし、自然現象は本質的に不確実性を伴い、その不確実性を伴った現象の予測が決定論的であるというのは不自然であり、不確実性を反映した確率予報のほうが合理的であると考えられるのは前述のとおりである。自然現象の予測という点では宇宙天気予報よりはるかに進んでいる気象予報では、基本的に確率予報が一般的である。例えば降雨予報などには必ず確率の情報が付帯されている。気象予報は数値シミュレーションという決定論的手法によって予測されているが、アンサンブルという手法を用いることで、数値シミュレーションによる予測から確率予報を作り出している。このような予報技術の進化に伴って、気象予報は決定論的予報から確率予報へ移行してきた。宇宙天気予報においても、決定論的予報から確率予報への移行が現実的になりつつある時期と考えている。さらに、3.3で述べたように、利用者の視点から考えても、確率予報は決定論的予報に比べて多くの利用者が利益を享受できる、より価値の高い情報であると考えられる。このようなことを考慮すると、今後のNICT宇宙天気予報の進むべき方向は確率予報への移行であり、太陽フレア確率予報のみならず宇宙天気現象の確率予報モデルの開発が極めて重要である。謝辞本業務の⼀部は、総務省委託業務「0155-0099電波伝搬の観測・分析等の推進」によって⾏われたものである。また、西塚直人テニュアトラック研究員からDeFN-Rモデルの予報結果の提供を受けた。ここに感謝する。参考文献】【1大辻賢一, 久保勇樹, “宇宙天気予報業務,” 情報通信研究機構研究報告, 本特集号, 5-1, 2021.2J. P. Finley, “Tornado Predictions,” Amer. Meteor. J., vol.1, pp.85–88, 1884.3A. H. Murphy, “Forecast Verification: Its Complexity and Dimensionality,” Mon. Wea. Rev., vol.119, pp.1590–1601, 1991.4A. H. Murphy, “What is a good forecast? An essay on the nature of good-ness in weather forecasting,” Wea. Forecasting, vol.8, pp.281–293, 1993.5A. H. Murphy and R. L. Winkler, “A General Framework for Forecast Verification,” Mon. Wea. Rev., vol,115, pp.1330–1338, 1987.6Y. Kubo, M. Den, and M. Ishii, “Verification of operational solar flare forecast: Case of Regional Warning Center Japan,” J. Space Weather and Space Clim., vol.7, A20, 2017.7WMO, Verification Methods for Tropical Cyclone Forecasts, WWRP 2013–7, 2014. https://www.wmo.int/pages/prog/arep/wwrp/new/docu-ments/WWRP_2013_7_TC_verification_15_Nov_en.pdf8T. J. DiCiccio and B. Efron. “Bootstrap confidence intervals,“ Stat.Sci., vol.11, pp.189–228, 1996.9N. Nishizuka, Y. Kubo, K. Sugiura, M. Den, and M. Ishii, “Reliable Prob-ability Forecast of Solar Flares: Deep Flare Net-Reliable (DeFN-R),” Astrophys. J., vol.899, 150, 2020.10I. T. Jolliffe and D. B. Stephenson, Forecast verification: A practitioner’s guide in atmospheric science, 2nd edn., John Wiley and Sons Ltd., Chichester, UK., 2012.11Y. Kubo, “Why do some probabilistic forecasts lack reliability?,” J. Space Weather and Space Clim., vol.9, A17, 2019.12A. Manzato, “A Note on the Maximum Peirce Skill Score,” Wea. Fore-casting, vol.22, pp.1148–1154, 2007.13D. S. Richardson, “Skill and relative economic value of the ECMWF ensemble prediction system,” Q. J. R. Meteor. Soc., vol.126, pp.649–667, 2000.14L. S. Gandin and A. H. Murphy, ”Equitable Skill Score for Categorical Forecasts,” Mon. Wea. Rev., vol.120, pp.361–370, 1992.15J. P. Gerrity, “A Note on Gandin and Murphy's Equitable Skill Score,” Mon. Wea. Rev., vol.120, pp.2709–2712, 1992.16T. M. Hamill, “Reliability Diagrams for Multicategory Probabilistic Fore-casts,” Wea. Forecasting, vol.12, pp.736–741, 1997.17M. S. Wandishin and S. J. Mullen, ”Multiclass ROC Analysis,” Wea. Forecasting, vol.24, pp.530–547, 2009.久保勇樹 (くぼ ゆうき)電磁波研究所電磁波伝搬研究センター宇宙環境研究室研究マネージャー/宇宙天気予報グループグループリーダー博士(学術)太陽物理学、予報評価技術1955-2 宇宙天気予報評価技術

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