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は得られないが、括弧の黒点自身の状態とその変化の著しい部分に関係があると思はれる。今回新しく大黒点の観測で爆発探索のための写真観測の前後30分以内に直接拡大太陽像の写真を試みたところ、6回の内過半数以上が直接写真像に出ていることが認められた。尚投影に依る観測では、観測時間及びその方法等の相違の為か一致した場合が尠い。これらの方法にはなほ調査の余地を残している。3.この大黒点群の消長とコロナの分布及強度との関係は材料が尠いので確実な所は判らないが、2月2―4日に南緯18°―27°附近にあった極大と2月14―15日に南緯18°付近のものがこれに関係し、第2回目の黒点回帰に関かん聯れんしてはその緯度は一致しないが、3月6日の東縁南緯13°―23°附近の極大、3月19日の25°附近のものがこれに関係していると思はれる。その強度は2月上旬より中旬に於て増加しているところから見れば、黒点の発達と関係あるらしく思はれるが、その後の観測材料が十分でない為か、黒点の増大にも拘らず強度は増加していない。これらの点についても今後の研究を必要とする。今後の展望現在よりも太陽活動がはるかに活発であった時代の記録は、規模の大きな太陽嵐とその宇宙天気影響の事例の大量のサンプルであり、今後の宇宙天気研究にとって貴重なデータとなることは間違いない。これらの大量のデータを整理し統計的に扱うことができるようにすることに加えて、WDC for Ionosphere and Space Weatherに蓄積されている電離圏観測データとの関係性を調べることで、太陽嵐と電離圏じょう乱との因果関係が見えてくる可能性がある。そのためのデータのデジタル化とデータベースの整備を今後も進めていく予定である。全てのデータを容易にアクセスできるようにデジタル化を進めるとともに、簡便に使用可能な検索機能を備えたデータベースとすることで、将来の宇宙天気予報で利用可能な過去の類似事例参照ツールとして構築することも目指している。Solar activity chartをベースとして作成したHistorical Spaceweath-er Viewerは、太陽–磁気圏–電離圏の現象を俯ふ瞰かんして捉えることができるツールであり、このページからイベントの検索や各データへのアクセスへのリンクを埋め込むなど拡充を図ることで発展させていく予定である。このような長期間にわたるデータは、観測手法の進展による品質の変遷が含まれている。このようなデータは統一的に扱うには難しいため、そのままではAIの学習データとして利用が難しい。観測技術の変遷の影響を解消してシームレスなデータベースを構築できれば、AIの学習データとしての利用が期待できる。謝辞本研究は、平成30年度電磁波研究所ファンド及び平成31(令和元)年度研究開発推進ファンド「TRIAL」の支援を受けて進めました。本研究を進める上でご協力をいただいた石井守電磁波伝搬研究センター長、久保勇樹宇宙天気予報グループリーダー、石橋弘光氏、丸橋克英氏には、この場を借りて感謝申し上げます。観測データを提供しているベルギー王立天文台、国立天文台に感謝申し上げます。参考文献】【1https://sw-forum.nict.go.jp/forum/2018/pdf/forum_presentation_1.pdf 2https://www.nict.go.jp/press/2019/11/07-2.html3“The Strategic National Risk Assessment in Support of PPD 8: A Comprehensive Risk-Based Approach toward a Secure and Resilient Nation,” 2011. https://www.dhs.gov/xlibrary/assets/rma-strategic-national-risk-assessment-ppd8.pdf4J. H. Allen, “Effects of the March 1989 solar activity,” EOS, vol.70, pp.1479–1488, 1989. DOI:10.1029/89EO004095https://www.ourenergypolicy.org/wp-content/uploads/2014/01/Geomag-netic-Storms-Information-Sheet.pdf 6Neugebauer, M. and C. W. Snyder, “Solar Plasma Experiment,” Science, vol.138, pp.1095–1097, 1962, DOI: 10.1126/science.138.3545.1095-a7Tousey R., “The solar corona” in Space Research XIII,“ edited by M. J. Rycroft and S. K Runcorn, pp.713–730, 1973.8International Ursigram and World Days Service (I.U.W.D.S.), Synoptic Codes for Solar and Geophysical Data, 1963.5図8(続) 1947年4月の史上最大規模の太陽黒点群の観測(d):(a)の観測内容を記述した文書。(d)2095-4 過去の宇宙天気資料電子化プロジェクト

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