ション)の地方時別予測誤差を示す。本NN予測モデルは、夜間よりも昼間の方が観測値と誤差が少なく、全体的にはIRIモデルよりも正確な予測結果を出力していることがわかった。夜間の誤差が大きい原因の一つとしては、夜間に発生するプラズマ・バブルの影響によるものと考えられ、NN予測モデルの更なる改善が必要である。Thammavongsy et al. [21] は、プラズマ・バブルが発生した場合にイオノゾンデで観測されるレンジタイプのスプレッドF(RSF)の予測に、中間層3層の誤差逆伝播型フィードフォワードNNを適用した。本RSF予測モデルでは、入力パラメータとして年通算日、季節、地理緯度、太陽活動指数、地磁気指数を含む。チュンポンにおける2013年から2015年までの3年間のRSFデータを用いて学習し、2016年のデータセットを用いて予測性能を検証するとともに、IRI-2016モデルによるRSF発生率との比較を行った。その結果、本RSF予測モデルでは、利用可能なデータが限られている場合でも、98.3%の精度で予測できていることが確認された。図9に示すように、IRI-2016モデルによるRSF発生率では、すべての季節において過大評価している場合が多く、本RSF予測モデルに優位性がある。一方、プラズマ・バブル発生が多い春分(3月)や秋分(9月)の予測率は、夏至(6月)より精度が落ちており、改善の余地があることが示された。まとめと今後の展望本稿では、SEALIONプロジェクトにおける電離圏観測網の現状と、SEALIONを利用した赤道異常、プラズマ・バブル、AIによる電離圏変動予測に関する最近の研究成果について紹介した。赤道異常の南北非対称性の発達には、赤道を横断する子午線方向の中性大気風が重要な役割を示していることが明らかになった。地磁気じょう乱に伴う東向き電場により昼間の赤道異常が急激に発達した際には、背景の中性大気風の影響で急激な南北非対称性の変化も見られた。プラズマ・バブルについては、発生しやすい季節や時間帯以外の3図8チェンマイ(上段)、チュンポン(中段)、コトタバン(下段)におけるNNモデル、IRIモデル(CCIRオプション)、IRIモデル(URSIオプション)の地方時別予測誤差の比較 左図(a)は実際の観測値との差を用いた二乗平均平方根誤差(RMSE)、右図(b)はIRIモデルからの改善率を示す[20]。24 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究
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