2017年9月に発生したXクラスの太陽フレアに起因する磁気嵐イベントに適用した例を図7に示す。電子密度高度積算値である全電子数(total electron content, TEC)の中低緯度の分布について、改良前のGAIAでは、大きな変動は特に見られない。それに対して極域変動を考慮した計算では、磁気嵐が発達した9月8日に、まず電子密度が広い緯度帯にわたって増大し、その後赤道域で減少し、その減少傾向は中低緯度までわたって見られる。観測されたTEC変動をよく再現している。このとき、東向き電場が強まり、その後に加熱された極域から赤道域に向かう中性風がみられた。これらはプラズマを高高度に持ち上げる効果を持ち、高高度では中性大気の分子成分が減少(O/N2比が増加)してプラズマ消失過程が生じにくくなるため、プラズマ密度が高くなりやすい。さらに、電離圏嵐の後半において、O/N2比の低い大気が極域から低緯度域へ運ばれプラズマ密度が下がるという特徴的な変化も、GAIAで再現された。地磁気じょう乱時に、太陽圏-磁気圏-電離圏相互作用の結果として電場・電流エネルギーが電離圏・大気圏へ流入され、さらに、中性大気と電離大気の相互作用により、多様な電離圏じょう乱が引き起こされる。During flareBefore flareUnit: logmsnm(a)(b)(c)(d)図6 (a) 2017年9月6日に発生したX9.3クラスの太陽フレア(太陽観測衛星SDOによる波長9.4 nmの撮像)(b) 同フレア発生前後の太陽放射スペクトルの変化(FISMモデルの出力)(c) 各波長の太陽放射光による電離率の高度分布(GAIAの計算結果同じフレア発生前後の差分を取ったもの。場所は0°E、30°N)(d) 各イオンの電離率の高度分布の変化 各実線はフレア発生直後、各点線はフレア発生前GAIA改良前観測[Lei+2018JGR]7日8日9日10日2017年9月7日8日9日10日GAIA極域改良版緯度[度]緯度[度]図7 経度115度の中低緯度域におけるTEC変動の緯度分布の時系列 2017年9月7–9日の3日分について、静穏日の日変化を差し引いた変動成分を示す。上から、観測[29]によるもの、改良前及び極域変動を考慮したGAIA計算結果。332-3 全球大気圏-電離圏シミュレーション
元のページ ../index.html#39