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でモデル化し、3層結合モデルとしたものも開発された[9]。このモデルにより、図3に示すようにプラズマバブルが伝搬とともに西に傾く様子が再現された。3.23次元シミュレーション上述の東西-鉛直断面における2次元シミュレーションモデルでは、計算領域に直交する南北方向に沿って全てのパラメータが一様であることを暗に仮定している。プラズマバブルの形状等の定性的な理解には有用であったが、現実に近い環境の下での発生の有無、成長速度、電波伝搬への影響等の定量的な評価は困難であった。磁力線は高緯度に向かって湾曲し、電子密度は赤道異常帯において最大値を取り、中性大気の風速や密度等の様々なパラメータが緯度変化を示すことから、現実に近いシミュレーションを行うためには3次元シミュレーションの開発が必須であった。2000年代に入ると、計算機性能の向上により、赤道電離圏を3次元空間として扱うモデルの開発が試みられ始めた。初期のモデルでは、磁力線平行方向の有限な導電率のため、プラズマバブルの成長は2次元シミュレーションから推定されていた値よりも遅くなる可能性があることが示された[10][11]。その後、Hubaらによって開発されたモデルにより様々な成果が発表され[12ほか]、3次元シミュレーションの有用性が認識されることとなった。このモデルは、全球電離圏モデルとして開発されていたSAMI3を改良したものである。計算領域を全球ではなく限られた経度範囲に制限し、空間分解能をプラズマバブルが再現できる程度にまで高めることで、SAMI3で用いられていた従来の計算スキームのままプラズマバブルを再現することが可能となった。筆者らは、2013年頃から赤道電離圏の局所シミュレーションモデルの開発に着手した。既に海外では複数のモデルが開発済みであったが、いずれもプラズマバブルの輪郭のみが再現されていただけであり、その内部の1 km以下のスケールの微細構造を再現可能なモデルは存在しなかった。実際の衛星航法に用いられている周波数帯の電波にシンチレーションを引き起こすのは、300–400 mスケールの不規則構造であることから、このスケールの不規則構造を再現し、電波伝搬図3 両半球の電離圏E領域をそれぞれ積分した層として与えた3層モデルで再現した、時間とともに西に傾くプラズマバブルの発達の様子[9]412-4 電離圏局所シミュレーション

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