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間変動を引き起こしているためであると考えられる。表1に図6のVICの値を用いてEs層の発生(foEs ≥ 8 MHz)の予測を行った結果の一例と、それから求めた的中率及びスキルスコアを示す。スキルスコアはいくつかの種類があるが、ここではHeidkeのスキルスコアを用いた[21]。予測精度の比較のため、単純に「今日Es層が発生すれば明日も発生する」とした場合の予測方法(持続予測)との比較を行った。VICによる予測方法では、以下の判定基準を用いている。(1)VIC ≥ 6.1×10-4 の場合は、明日Esが発生する(Yes)(2)VIC ≤ -2.0×10-4 の場合は、明日Esは発生しない(No)(3)6.1×10-4 > VIC > -2.0×10-4 の場合は、明日は今日と同じ(持続予測)Es層の発生は季節変化が大きく、夏季にはほぼ毎日発生し、冬季はほとんど発生しないため、単純な持続予測の方法でもある程度良い精度で予測できるが、GAIAで得られるVICによる数値予測情報を加えることで、更に予測精度が向上することが確認された[20]。しかし、まだ精度の向上幅は十分とは言えず、更に予測手法の改良が必要である。NICTの宇宙天気予報センターで現在試験運用しているリアルタイムGAIAは、数日先までの大気圏と電離圏の予測値を与えることが可能である[5]。このシステムを用いてEs層の発生予測試験を行ったところ、1〜2日先までのEs層発生に関しては、GAIAによる数値予測は有意な情報を与えることがわかった[20]。現在、我々のグループではリアルタイムGAIAを用いたEs層発生の予測システムの開発を進めている。むすびEs層は通信や放送、航空管制などに悪影響を及ぼすことから、その発生予測は宇宙天気予報の大きな課題となっている。Es層の発生や変動に関しては古くから様々な観測や数値モデルによる研究が行われてきたが、基本的にはウインドシア理論に基づく理解に留まっていた。最近になって、GAIAを用いた数値シミュレーションと高精度の局所電離圏モデルを組み合わせることによって、実際に観測されたEs層の再現が可能となってきた。その結果、ウインドシア理論だけではEs層の変動を説明するには十分でなく、様々な物理過程が関与していることが明らかになった。また、GAIAを用いた予測方法の開発によってEs層の発生予測に関しても重要な手がかりが得られた。しかしながら、ある場所におけるEs層の発生時刻や規模 (foEsの大きさ)などの予測は依然難しいのが現状である。今後、GAIAや局所電離圏モデルの改良を進めるとともに、データ同化を用いた予測手法の開発を行うことによって実用的な予測を目指していく。謝辞本稿の作成は、総務省委託業務「電波伝搬の観測・分析等の推進」によって行われたものである。5図62009年の国分寺における日平均したfoEsと鉛直イオン収束率VICの比較 青線がイオノゾンデで観測されたfoEs、赤線がGAIAで求められた高度120 kmにおけるVICを表す。表12009年のEs層発生(foEs ≥ 8 MHz)の予測結果 予測のYesは、Es層が発生すると予測した日、Noは発生しないと予測した日を表し、Es層発生のYesは実際にEs層が発生した日、Noは発生しなかった日を表す。(a)は持続予測(明日は今日と同じとする予測)、(b)はVICを用いた予測。下段の値は的中率とスキルスコアを表す。532-5 スポラディックE層の再現

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