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はじめに東南アジアに展開している赤道域電離圏観測網(South East Asia Low-latitude Ionospheric Network: SEALION)[1]で運用中の可搬型FMCWイオノゾンデシステム(以下「現行可搬型」と呼ぶ)は、運用開始から20年近く経過しているため、実装されている電子部品の耐久性や現地での落雷サージなどに起因する経年劣化の問題を抱えている。これまで故障のたびにパーツ交換などの修理対応を行ってきたが、設計寿命を超えた回路基板は、基板パターンが脆もろく剥落しやすいため、製造元でも修理困難な機器が増えてきているのが現状である。また、開発当初は大量生産されていたFPGA等の主要半導体は、現在では入手困難となっているものが多く、同じ仕様の代替機の新規製作は難しくなっている。そのため、SEALIONによる赤道域電離圏観測を今後も安定して運用するためには、こうしたシステム老朽化の問題に対して早急に対処する必要がある。一方で、観測サイトは東南アジアに位置するため、現地作業の機会が限られており、その運用はネットワーク越しのリモート作業に頼らざるを得ない。ネットワーク運用に関しては、年々ネットワークセキュリティの重要性が増しており、SEALION開始当初よりその運用体制について議論し見直し検討を進めてきた。ここで、SEALIONでのイオノゾンデシステムの運用にあたっての具体的課題は以下の3項目にまとめられる。①ネットワークセキュリティ運用②観測サイト内PC群の運用効率及び費用対効果の改善③熱帯域特有の雷害への対策①については、観測サイトで運用するPC群が主な保1我々は、チェンマイ(タイ)・チュンン(タイ)・コトタバン(インドネシア)・バクリゥ(ベトナム)・セブ(フィリピン)の東南アジア4か国5拠点に展開した赤道域電離圏観測網(SouthEast Asia Low-latitude Ionospheric Network: SEALION)において、可搬型FMCW イオノゾンデシステムによる電離圏観測を10年以上にわたって運用している。しかし、基板劣化など機器の老朽化及び熱帯域で頻発する雷害のため、次第に観測システムの維持や観測継続が困難になってきた。さらに、近い将来、FMCW イオノゾンデ搭載のFPGAのような主要ICの供給が、途絶えてしまうことも懸念されている。こうした経緯から、換装可能な新システムの導入が喫緊の課題として浮上してきた。ここでは、現在行っているSoC(System-on-a-Chip)プラットホームを用いた次期可搬型FMCW イオノゾンデシステムの開発経過の概要を報告する。NICT’s portable and low-power FMCW (Frequency Modulated Continuous Wave) ionosonde system has been under operation for over 10 years at 5 sites in 4 countries in Southeast Asia: Chiang Mai and Chumphon (Thailand), Kototabang (Indonesia), Bac Lieu (Vietnam) and Cebu(Philippines). This ionospheric observation network, called as the Southeast Asia Low-latitude Ionospheric Network (SEALION), has basically been operated remotely via the internet. However, because of system deterioration and frequent lightning damages in the tropical region, it becomes difficult to maintain the system and keep observations. In addition, supply of some of indispensable ICs, such as the FPGA embedded in the FMCW ionosonde, will be stopped in near future. There-fore, the development of a new ionosonde system is urgent issue for us to improve the SEALION. We have started to develop a new FMCW ionosonde system using the Xilinx Zynq SoC (System-on-a-Chip). This is a progress report for these past 2 years.2-8 Programmable SoCを用いたFMCW イオノゾンデの開発2-8Programmable SoC-based FMCW Ionosonde石橋弘光 山川浩幸ISHIBASHI Hiromitsu and YAMAKAWA Hiroyuki752 電離圏研究

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