る正弦波(余弦波:cos)を掛け合わされたそれぞれの信号をCICフィルタに入力する。CICフィルタは(Cascaded Integrator Combi) 微分回路と積分回路で構成され、サンプリングデータを12,500分の1に間引きする。アナログ回路では、低い周波数に変換する周波数変換回路に相当する。さらにFIRフィルタによって必要な信号付近に帯域を絞ると同時にデータ補完を行い32bit幅の10kSpsのデジタルデータとし、Dual Port RAMに転送する。次期可搬型は、ここまでの回路を2系統持っており、二重化されている。受信処理及びデータ転送をZYNQ-7000 SoCのPSブロックであるARMプロセッサで行っている。このPSブロックがイオノグラム画像作成、後述するApache/CGI処理など外部とのインターフェイスを担っている。このPSブロックは送信処理も担っている。送受信に関わるパラメータは、パラメータファイルとして次期可搬型の本体内に保存される。このパラメータファイルをPSブロックのARMプロセッサが読み取り、送受信を制御する。このARMプロセッサはLinux上で、各種アプリケーションの実行を行う。次期可搬型は、GPS受信機を搭載し、時刻信号を基準及び送受信タイミングの基準信号とする。この基準信号に従ってZYNQ-7000 SoC PSブロックのARMプロセッサが動作する。このARMプロセッサは、疑似乱数生成回路を制御し、32 bitの数値的疑似乱数信号を発生させ、FMCWの変調信号を生成する。同時にこのARMプロセッサは、数値発振器(NCO)を制御し所用周波数の搬送波を生成する。変調信号を掛け合わせ、送信信号とする。ここまでは数値的なデジタル信号として処理される。この後に続くD/A変換回路(DAC)で短波帯のアナログ信号に変換され増幅回路、外部の広帯域パワーアンプ及びLPF Bankを経て空間に発射される。3.1.1.2 RF系・受信系・搭載部品の見直し 受信特性に影響する重要部品の一つであるLNA (Low Noise Amplifier)は、外来波混信に対して飽和しにくい高IP3特性を有するMini-Circuits製TSS-13HLN+を採用した(図2RF系)。また、受信波のA/D変換を担うICには、16 bit/125 MHzで動作するAnalog Devices Inc.製AD9268BCPZ-125-NDを採用している(図2受信系)。・現行可搬型の周辺機器のオンボード化 以下二つの周辺機器の機能をFMCカード基板上に実装した(図2RF系)。① OBS Selector 受信系に搭載されるプログラマブルアッテネータ。観測の障害となる強い放送波を減衰させる機能を有する。減衰量は、観測プログラムによって制御される。また、アンテナ系から侵入する雷サージから観測装置を保護するため、観測プログラムからの制御で受信機への入力をオフにする機能を備える。現行可搬型では、周辺機器「OBS Selector」の名称で受信アンテナと受信部の間に装着されている。② Preselector 受信系に搭載される8バンドのBPF(Band Pass Filter)。各バンドのBPFは信号処理系から出力される切替信号で自動選択される。イオノゾンデによる電離層観測では広範囲の周波数で受信を行うため、どうしても受信系は受信帯域外の外来波の影響を被るが、Preselectorはこれらの影響による受信器の混変調を低減させる機能を有する。現行可搬型では、周辺機器「Preselector」の名称で受信アンテナと受信部の間に装着されている。3.1.1.3送信系前述の信号処理系で生成された送信信号からアナログ信号に変換するDAコンバーターは、16 bit/125 MHz Analog Devices Inc.製 AD9726BSVZ-NDを採用している。なお、SEALIONで展開するFMCWイオノゾンデは、一つのアンテナ塔に送信局・受信局を配置するMonostatic方式のアンテナ系で運用しており、送信アンテナから受信アンテナに回り込む直達波の影響を避けるため、疑似ランダム符号(Pseudo Random Noise) によって送・受の交互切換えを行うPulsed Chirp方式を採用している[4]。 本機でもこの方式を踏襲して、信号処理系で生成される切替信号によって送・受切替処理を行っている。さらに、後述するLPF BANK制御信号、広帯域パワーアンプ制御信号の受け渡しも送信系で担っている。3.1.1.4 GPS受信系基板上にGPSモジュール(UARTタイプのGPSレシーバ)を搭載し、外部の汎用GPSアンテナ(5Vタイプ、LNA内蔵型)と接続して運用される。出力信号は、時刻情報とPPSの2種類で、信号処理系にUART(LVCMOS)インターフェイスを介して渡している。3.1.1.5 電源系現行可搬型と大きく異なるのは、電源ユニットを廃してAC/DCアダプターを採用したことである。これによって筐きょう体たいの発熱を押さえることができ、冷却ファンも不要となり、重ねて大幅な軽量化・コンパクト化も実現した。さらに、熱帯域で頻発する停電などの雷害に備えてZC706のGPIOを利用した自動停電検出機能を新たに実装し、当該システムの保護に必要な退避処理(パワーアンプ保護・無用な電波送信防止・外部記憶装置保護など)を経て安全かつ自動的にシステム停止できる運用環境を実現した。後述のように雷害対78 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究
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