OSにはUbuntuを採用し、南極昭和基地で運用しているモジュラー型FMCWイオノゾンデシステムの制御ソフトウェア(Skmanager2 for Linux)を基に開発した。現行可搬型からの換装に配慮して、制御部/信号処理系で生成される生データに加えて、現行可搬型と互換性のあるデータも生成できる仕様になっている。さらに、制御ソフトウェアの各種データフォーマット、制御ソフトウェア観測シーケンスについても現行可搬型から継承されている。さらに、apacheを導入して、WEBブラウザ経由の機器制御を実現し、現地だけではなくネットワーク経由の遠隔監視も可能となったことから、とりわけ東南アジアに展開するイオノゾンデ観測網の運用体制強化が期待される。具体的には、①最新の観測状態表示、②過去の観測結果一覧表示、③装置ステータス表示、④装置自己診断等を実行するCGIが実装されている。最後に完成した次期可搬型FMCWイオノゾンデシステムの写真を図5~8に示す。試験観測次期可搬型による試験観測結果を示す。2021年6月現在、国分寺局、北海道サロベツ、鹿児島県山川及び沖縄県大宜味の各観測拠点でパルス型レーダーVIPIR2による5分ごとの定常電離層垂直観測が行われている[7]。並行して各局相互間の斜入射観測も行われているため、試験観測に使えるのは、これら一連の観測の狭間、およそ1分間しかない。よって、試験送信可能な1分弱の時間で1回の観測を終えるために、送信波Sweep Rateを現行可搬型の5倍にあたる500kHz/secに設定して試験観測を行った。図9左は、2021年6月14日18:02(日本標準時)の観測結果であるが、F層のトレースが明瞭に認められる。図9右に示すとおり、ほぼ同じ時間帯の18:00(日本標準時)のVIPIR2定常観測にも同様のエコーが認められており、次期可搬型は適切に動作していると考えられる。なお、この試験観測は、電離圏観測のための実験試験局(小平市上水南町4-2NICT内)として令和3年5月20日付で無線局変更許可(無線局種別:実験試験局4送信系FMCモジュール受信系FMCモジュールZYNQ-7000 Soc ZC-706データ用USB記録メディア収納スペース※ GPS UNIT,アナログ回路は一層下に実装図5 次期可搬型FMCWイオゾンデ制御部内部写真GPS受信系UNIT受信系UNIT送信系UNITGPS UNIT,アナログ回路図6 次期可搬型FMCWイオゾンデ制御部内部写真図7 次期可搬型FMCWイオゾンデ制御部 背面写真図8 次期可搬型FMCW イオノゾンデシステム上から順にLPF Bank, 制御部,広帯域パワーアンプ図9 イオノゾンデ試験観測(国分寺)80 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.1 (2021)2 電離圏研究
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