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ルを先行させ、数値モデルによる数値予報を、時間をかけて開発する戦略とした。このコンセプトはその後、人工知能(AI)の研究が活発になるにつれて経験モデルの位置づけがより強化されたこと及び開発された技術を宇宙天気予報業務及びユーザーの利用につなげるためのアプリケーション開発が追加されたことなどの改訂を経つつ、第4期中長期計画にも引継がれた。本特集号で紹介される各研究課題と成果は、ほぼこのコンセプトに沿ったものとなっている。主な成果について、太陽・太陽風、磁気圏、電離圏の各領域で開発された項目を表1に示す。NICTにおける今後の宇宙天気研究の展望              2021年に第5期中長期計画が開始されるにあたり、宇宙環境研究室が検討したコンセプトを図3に示す。太陽・太陽風、磁気圏、電離圏それぞれにおいて観測・予測及び情報提供に至るまでの研究を遂行するコンセプトはこれまでの形を踏襲している。この中で特に重点的に取り組む手法として、(1)衛星・飛ひ翔しょう体による定常宇宙天気監視、(2)データ同化手法によるリアルタイム宇宙天気予報、(3)AIを用いた予測モデル開発の3本柱を設定している。また、これらのアウトカム3宇宙環境ロードマップのコンセプト観測外部データの入力モデル・シミュレーションコード構築経験モデル数値モデル先行運用サービス数値予報宇宙天気予報精度向上インプットデータ提供比較による検証観測の運用外部機関への提供観測機器の開発モデル構築をコア技術と位置づける。観測はその結果をモデルにインプットすること及びモデルの検証と位置づける未知のプロセスを有する宇宙天気の予報を行うため、経験モデルと数値モデルの2本立てで進める。最終的な目標を共通認識として持つ図2 第3期中長期計画における宇宙環境インフォマティクス研究室の研究コンセプト太陽・太陽風磁気圏電離圏観測太陽電波観測沖縄磁力計国内定常電離圏観測(SDO・SOHO・野辺山)(気象庁磁力計・GOES)SEALION(GEONET)数値モデルREPPU-SUNREPPU-MAGNETOSPHEREGAIASUSANOOAI・経験モデルDeFN放射線帯モデル電離圏予測モデルアプリケーションWASAVIESSECURESHF-START表1 宇宙環境研究室がこれまで開発してきた、宇宙環境に関する各領域のモデル及びアプリケーション人工衛星・月・深宇宙探査への宇宙環境情報提供必要とされる情報を必要とされる頻度・精度で必要とされるユーザーに提供太陽太陽風磁気圏・電離圏観測︓国際協⼒のもと地上観測の拡充衛星・飛翔体による定常宇宙天気監視の検討予測︓観測と数値予報モデルを⽤いたデータ同化手法の開発による精度向上過去の観測結果を教師データとしたAIを⽤いた経験モデル開発提供︓ユーザーとの対話によるニーズの調査ユーザーニーズに即したアプリケーションの開発、情報提供準天頂衛星によるアジア・オセアニア域での⾼精度測位宇宙天気災害ベンチマーク作成による防災・減災図3 第5期中長期計画における宇宙環境研究室の研究コンセプト31 緒言 宇宙天気研究の現状と展望

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