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からは、図2のように電離圏の垂直観測に加え、オーロラレーダ、リオメータ、短波電界強度測定、VLF電波測定等、様々な観測が昭和基地において実施された。電離圏垂直観測以外のデータは、Japanese Antarctic Research Expedition data reports. Ionosphere[4]として、国立極地研究所から発刊された。その後、第25次隊(1983年)からは南極観測船「しらせ」になり物資の積載量は「ふじ」の倍の1,000トンとなり観測物資も大幅に増えた。中層大気観測計画( ICSU(国際学術連合会議。現、国際科学会議)が主唱し、1982~1985年末まで実施された中層大気に関する国際協力観測計画。MAP(Middle Atmosphere Programの略)ともいう。)では、宙空観測で実施されたロケットによる電離圏の直接観測[5]や大型バルーンによるオーロラX線観測及びVLF観測、マルチビームリオメータ等に合わせ、電離層定常観測では電離圏垂直観測(特別観測)、VHFオーロラドップラレーダ観測[6]、航行衛星NNSSによる衛星測位誤差観測[7]等が集中的に行われた[8]。オーロラレーダは、第19次隊でドップラ観測機能が追加されよりオーロラジェット電流の速度や中層大気上部の風速を測定することが可能となり、MAPでは活躍をした。2.3近年の電離圏観測(2009年~現在)2009年に就航した2代目南極観測船「しらせ」の翌年2010年の第52次隊からからは、越冬隊ではなく夏隊での参加となった。また、近年では、図3に示す旧電離層棟及び電離層棟が老朽化となり電離圏垂直観測装置2器は電離層観測小屋に設置し、屋外に設置する40m高のデルタアンテナ2基で観測を実施している。また、GPSによる衛星電波シンチレーション観測は電離層観測小屋、管理棟、重力計室等に受信機を設置して観測を実施している。昭和基地で収集された電離圏関連データは、衛星回線を通じ国立極地研究所を経てNICTへ送られ、宇宙天気予報のための基礎データとして利用されている[9]。詳細は、3「現在の電離圏観測」に記載する。現在の電離圏観測3.1電離圏垂直観測3.1.1概要電離圏垂直観測は、南極昭和基地における観測当初から実施されている電離圏観測である。電離圏は電子密度に応じた周波数の電波を反射する性質がある。図4のように電離圏垂直観測(イオノゾンデ観測)はこの性質を利用し、地上から周波数を変えながら電波を発射し、電離圏から戻ってくる反射エコー(イオノグラム)の時間を計測することにより、電離圏の電子密度高度分布を知ることができる。この電子密度高度分布が、通信・放送用の電波伝搬の状態を知る上で非常に重要である。高緯度帯で発生するオーロラは電離圏のじょう乱と強く関係していることが知られている。図5に示すように、昭和基地では、1959年から現在に至るまで長期にわたる電離圏観測を行っており、南極での貴重な観測点となっている。近年では、電離圏長期変動と地球温暖化との関連が指摘されるなど、電離圏長期観測データの重要性が高まっている。3.1.2FMCW電離圏観測装置の開発電離層定常観測の冬季無人化への取組として、安定運用が可能な FMCW電離圏観測装置(図7)を新たに3図2電離層棟の観測機群、写真は左から、9B型電離圏観測装置、オーロラレーダ50 MHz・122 MHz、NNSS測位誤差測定、データロガー、短波電界強度測定・リオメータ20・30・50 MHz・オメガ電波観測の観測装置等(データは紙のチャートとデータロガーで記録された)図3昭和基地において、電離圏観測装置等を設置している建物及びデルタアンテナ(2018年現在)852-9 南極電離圏観測

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