蓄積サーバに保管される。データ処理されたイオノグラムから、主要な電離圏パラメータを読み取り、手動読み取りデータとして保存する。図8は、FMCW型電離圏観測装置と旧10C型電離圏観測装置のイオノグラム比較を示す。FMCW型のイオノグラムは、シャープに表示されていることが読み取れる。この読み取りデータから時系列の図を作成し、読み取りデータと合わせて南極電離層年報(IONOSPHERIC DATA AT SYOWA STATION(ANTARCTICA))として年1回WEBで公開している。図9はその一部のプロット例を示す。高緯度のイオノグラムは非常に複雑であるため、これまで、専門家による目視により解析をしてきた。専門家による目視解析には熟練と時間を要するため、今後は、計算機による自動的処理で高精度データ解析を目指す必要性がある。図10は、昭和基地における長期観測結果の例を示す。太陽黒点数とF層臨界周波数(foF2)の良い相関がみられる。3.2衛星電波シンチレーション観測3.2.1概要GPS等の衛星測位とは、複数の測位衛星からの信号を受信し、受信地点における位置を同定する仕組みである。測位衛星は主に高度2万キロに分布しているが、図11に示すような衛星測位において、電離圏遅延・衛星位置・衛星時計・マルチパス・対流圏遅延といった様々な要因で、誤差が生じる。この中で電離圏遅延は誤差の4割弱を占める最も大きな要因であると考えられている[11]。電離圏は、電離した(プラズマ化した)気体の存在する領域であり、電離圏内における電磁波の伝搬は、経路における電子数の影響を受ける。電子密度分布の空間的不規則性は、電波の位相を乱し、隣接する異なった位相の電波の干渉(フレネル回折)によって電波のじょう乱を引き起こす。このじょう乱を一般にシンチレーションと呼び、測位誤差の増大や、測位衛星信号の受信障害の要因となる。シンチレーションを起こす不規則構造の空間スケールは、フレネル半径で現され、GPS衛星から送信されるL1帯を受信する場合、フレネル半径は約300 mである。電離圏のシンチレーションを起こすメカニズムは、赤道域と極域で大きく異なる。極域電離圏には、オー||| | ||| | || | 151015 151015 20 25 30⾒かけの⾼さ1000km -500 km -0 m -周波数(MHz)F層F層E層E層図82010/05/12現地時間(LT)12時半頃に観測された典型的なイオノグラム 左図のFMCW電離圏観測装置は、500 kHzから16 MHzまで掃引(横軸)して電離圏の見かけ高さ(縦軸:電波が電離圏から反射して受信機に到達するまでの時間を高さに換算)を表し、電子密度に相当する分布を示している。右図は、旧10C型電離圏観測装置のイオノグラム。ほぼ同時刻に観測されたデータであるが、FMCW型の方がシャープに観測されている。図10昭和基地における長期観測から得られたF層臨界周波数(foF2)の年変化 上図は太陽黒点数(赤)、下図はfoF2(緑は昭和基地時間12時、青は0時)を示す。太陽黒点数と良い相関を示す。昭和基地ローカルタイム(時)01223周波数(MHz)151051図9南極電離層年報2020年3月のF層臨界周波数(foF2)のメディアンプロット 縦軸に周波数、横軸に時間(昭和基地のローカルタイム)を示す。日変化がみられる。872-9 南極電離圏観測
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