GALILEO、QZSS、BeiDou衛星からの信号も用いるものである。どちらのシステムにおいても、50 Hzサンプリングによる定常観測を実施しており、シンチレーションの発生に関する様々な特性を詳しく調査することにより、高緯度帯における衛星測位精度向上を図っている。電離圏変動は、太陽活動度とも密接な関係があることから、11年の太陽活動周期よりも長期間の観測を行うものである。それぞれのシステムは、図12のように昭和基地に数百メートルの間隔を置いて、3台ずつ設置する(GNSSシンチレーション観測システムについては、令和3年度(第63次隊)に3台になる予定)。3台で受信される信号の時間変化を相関解析することにより、シンチレーションの原因となる電子密度不規則構造の移動速度(プラズマのE×Bドリフト速度)の導出を狙いとしている[13]。3.2.2GPSシンチレーション観測システム昭和基地には3台、電離圏観測小屋(A)、管理棟(B)及び重力計室(C)に、GPSシンチレーション観測システムが設置されている。最初の装置は平成22年度夏期間行動中(第52次隊)に電離圏観測小屋と管理棟の2箇所に設置され、翌年の平成23年度(第53次隊)夏期間行動中に重力計室に設置された。それ以降、メンテナンスや停電等による一時的な停止を除き、3台による定常観測が実施されている。観測システムは、図13に示すとおりである。衛星からの電波は、GPSアンテナを通ってGPS受信機で受信され、RS232C信号として出力される。RS232C信号は、RS232C-TCP/IPコンバータによってTCP/IP信号に変換され、Linuxサーバに入力される。図14、15には、アンテナ、受信機、制御PCの実機例を示す。NovAtel社製GSV4004Bを受信機とし、Moxa社製NProt5410 TCP/IPコンバータを利用して通信速度を上げている。受信機は、GPSの発するL1及びL2の二つの周波数を同時に、50 Hzのサンプリングレートで受信している。受信機の制御にLinuxを搭載したPCを用い、データ保存に外付けHDDを利用している。アンテナにはNovAtel社製のGPS-702-GG、アンプとして5D-SFAを用いている。・垂直全電子数(VTEC)とS4GPSシンチレーション観測から、図16のVTECと図17のS4をリアルタイムに求めている。・データの公開観測結果は準リアルタイムデータとしてインターネットを通じ、南極観測のWEBページ[10]から公開されている。3.2.3GNSSシンチレーション観測近年は、測位衛星として米国のGPSに加え、ロシアのGLONASSやヨーロッパのGALILEO、日本のQZSSなど、複数のシステムが様々な波長帯で運用されており、これらを称して一般にGNSS (Global Navigation Satellite System)と呼ばれており、より高度な測位システムの運用に用いられている。シンチレーション観測においても、従来のGPSのL1及びL2だけを利用したシステムから、GPS (L1), GLONASS (L1), Galileo (E1), BeiDou (B1)1160-1252 MHz, GPS (L2/L5), Glonass (L2/L3), Galileo (E5), BeiDou (B2)の受信を可能にした所謂マルチGNSSシンチレーション観測が主流になっている。昭和基地での観測において図13 GPSシンチレーション観測システムの構成図15GPSシンチレーション観測システムの受信機部分の一つ(昭和基地重力計室に設置)図14GPSシンチレーション観測システムのアンテナの一つ(昭和基地管理棟に設置)892-9 南極電離圏観測
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