スゲートの構想がある。利用者は、ゲート通過と同時に大容量コンテンツをダウンロード可能とする。人が改札ゲート付近に構築可能なミリ波通信可能エリアを通過してしまう時間がおよそ250ミリ秒であることから、この時間内でコンテンツをダウンロードさせる必要がある。図2は、通信可能時間が250ミリ秒であった場合におけるリンク確立に要する時間とダウンロード可能なファイルサイズ(伝送データ量)の関係について、異なる複数のデータ伝送速度別で示されているが、同図より通信速度が28 Gbpsを達した場合に、250ミリ秒内でH.265圧縮のHD動画コンテンツ2時間分(859 MB)のコンテンツをダウンロードさせるためには、リンク確立時間を2ミリ秒以下に短縮する必要があることが分かる。同様の議論は、リンク確立時間だけに必要なものではない。仮にリンク確立以外に必要なプロトコルオーバーヘッドが想定される場合も注意が必要であることは想像に難くない。例えば、デバイス間認証に関わる処理に要する時間や、データ転送を行う具体的ファイル部分の抽出処理に要する時間なども考慮したうえで、最終的にはアプリケーションデータの伝送(ダウンロード)を完了させるように設計する必要がある。我々は上記のようなデバイス間認証に必要な情報や、データ転送を行う具体的ファイル部分の抽出処理に要する情報をTransferJet-Xによって達成される超大容量ではあるが極めて狭域な通信可能エリアにモビリティが達する前、おおよそ数十メートルないしは数百メートル手前の時点で、920 MHz帯(サブギガ帯)を使った中距離伝送が期待できるマイクロ波IoT無線技術を併用して事前交渉・認証を行うことで、ミリ波帯を使ったデータ通信可能時間を制御系の情報交換のための消費しない方式を検討中である。図3に、デバイスAとデバイスBがマイクロ波IoTを用いて互いの状態や状況を把握しつつ、近接した後にミリ波IoTによって大容量データ伝送を行うことを想定した、事前交渉・認証方式のおおまかなフローチャートを示す。まずデバイスAはマイクロ波IoTによって近接可能な近隣デバイスを検索することでデバイスBの存在を認識する。次にデバイスAはデバイスBに対して、ミリ波IoT通信リンクが確立された後にアプリケーションレベルで必要となる認証要求を事前に行う。このような事前の認証作業によって、デバイスAはデバイスBとミリ波IoTによって通信可能な範囲まで移動してリンクが確立された直後に、必要な大容量データの転送を行うことができる。実装上は、マイクロ波IoTを用いた事前交渉のタイムアウトに関わる設計方針や、複数モビリティが対象となった場合の処理順序の問題などが考えられる。また、状況によっては物理的に近接してミリ波IoTを用いたデータ転送を行うよりも、低速であってもマイクロ波IoT等を活用してデータ転送を行った方が結果的に早くに情報の転送が完了することも考えられるため、検討が必要である。Device BDeviceAmicrowave IoT wirelessmmWave wirelessNeighbor device discovery queryResponseService pre-authorization requestResponseReaching to the proximity stateIEEE 802.15.3e link establishmentApplication data transferApplication pre-association図3 マイクロ波IoTを併用した事前交渉・認証方式のフロー05001000150020002500050100150200250Dowload file size [MB]Link setup time [msec]4.6 Gbps (16QAM)6.9 Gpbs(64QAM)28 Gbps (64QAM x 4channel)66 Gbps (1024QAM)Link setup time = 2 msec(=248 msec for data transmission)図2 リンク確立時間と転送可能ファイルサイズの関係[4]96 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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