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データ転送ネットワークを構築することができると考える。③近接機会を管理する技術Piggy-back Networkの構築に必要ないしは有効な、上述したような①近接機会を活用する技術、②近接機会を創出する技術を確立し、モビリティによるデータの物理的移動とモビリティ間でのすれ違い通信に基づいたデータ交換によるデータ転送ネットワークの基本動作が可能となったとしても、多数のモビリティが介在しつつ、それらモビリティ間で通信が自律的に発生することを鑑みれば、いつ、どこで、どのようなデータが発生し、どの移動体によってどこからどこまで運ばれ、そしてまた新たなどの移動体に交換されたのか等のイベント履歴を管理することは極めて難しい課題である。特にデータの転送に貢献することで報酬(インセンティブ)を与える仕組みをプラットフォーム化して運用する上では、このようなイベント履歴を厳格に管理する必要があるが、これを現実的な管理計算処理リソースの範囲で実践すると同時に、場合によってはセキュリティやプライバシーの問題も解決できる方法で運用する必要があり、より一層課題の解決を困難にするものと考えられる。このような課題を解決する一つのアプローチとして当研究室では各モビリティに台帳を搭載することで、上述したようなイベントの履歴を分散型台帳技術によって共有・管理することで、効率的かつ改ざんの難しいイベントの発生履歴の管理手法を検討中である。また、①近接機会を活かす技術とも密接に関連するデータ管理技術として、散在するモビリティが保持するデータのうち、どのデータが他者と共有されるべきデータか、もしくはどのデータが他者によってアップデートされるべきデータを各々が自律的に把握すると同時に、モビリティ間のすれ違い通信機会を得た場合には、即時にこれら把握できている情報を基にデータ通信を行う必要がある。しかしながら、モビリティが広域セルラー型の携帯ネットワークに常時接続されている状況を考慮しない場合には、モビリティ間の直接データ交換に利用できる通信時間は、やや長時間の通信時間を確保できるマイクロ波を用いたデバイス間通信であれ、ミリ波帯等の超高周波を用いたデバイス間通信であれ有限である。よって、いかに効率的に特に超高速・短時間で行われる超高周波を用いたすれ違い通信に備えて、交換されるべきデータの検索・抽出を正確に行うかは重要な技術的課題と考えられる。当研究室では上記課題においても、モビリティが保持するデータの交換履歴を台帳管理しつつ他モビリティや場合によっては携帯ネットワークを活用したクラウドとの通信機械を使った分散型台帳技術を利用することで、すれ違い通信が行われる前のごく僅かな時間で、交換されるべきデータの抽出や、そもそもすれ違い通信が可能と予想されるモビリティ間で実際にデータ交換を行うべきなのかを判断できると考え検討している。図5はモビリティが保有しているデータについて台帳管理されない場合(左)と、されている場合(右)の対比を表現したものであるが、台帳管理されていない場合にはモビリティが保持するデータやデータが細分割されたセグメント化データを個別にバージョン管理すると同時に、すれ違い通信の機会を得たモビリティ間では、全てのデータないしはセグメント化データについてバージョン比較を行うことになる。保持するデータ数が少ない場合には大きな問題にならないが、データ数が膨大になった場合、データの検索と抽出に時間を要することとなり、このデータ検索・抽出処理の時間、モビリティの活動を止めない限りにおいては近接通信の機会を逸することとなる。一方データについては台帳管理されている場合は、データの部分的な更新履歴がブロックで管理されており、僅かな制御メッセージの交換のみでこれからすれ違い通信の機会を得Seg. #kSeg. #nCompareCheckequalityCompare hashed value図5 台帳技術を用いたモビリティ間データ同期の原理98   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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