図9のロボット制御部に対してMQTTプロトコルによりメッセージを送信することで行っている。本実験では、免許不要920 MHz帯IoT 無線通信規格IEEE802.15.4gに基づく無線通信機能とプログラマブルな信号処理機能を有するIoT無線ルータ(YeST+: ワイステーションプラス)を開発し、人が操作するデバイスからの見廻り依頼をロボットが受け付けることや、ロボット同士で協調動作するための各種機器の自律制御を可能にした。同一ロボット内における各デバイス間の制御メッセージは、GbEケーブル経由でMQTTプロトコルを用いて伝達されるが、YeST+が本ロボットシステムの中枢的な役割を担い、ロボットの移動指令、4Kカメラによる撮影の指令及びTransferJet Xを用いた通信の指令を行っている。自律移動サービスロボットに搭載している無線通信技術TransferJet Xは、数m程度の近距離であれば超高速の無線伝送が可能であり、短時間で大容量データを非接触に収集・配信できる。よって、ロボットの移動によって遠方の撮影データを近傍まで届けてもらい、TransferJet Xによって無線伝送することで、実質離れた場所の撮影データを短時間で無線転送した場合と同等の効果を得ることが可能になる(図10)。開発したサービスロボット協働型見廻りシステムによる非接触でのデータ配信能力を検証するための基本的な実証実験では、およそ8 m×18 mのオフィスルーム内において、見廻り依頼者の位置から約10 m先の様子の見廻りとして1分間の動画撮影を自律移動サービスロボットに依頼し、撮影データを届けてもらう。見廻り依頼者の元では、撮影データの転送完了と同時に映像が自動再生される再生装置を構築した。本実証実験の結果、見廻り場所においてロボットが撮影したデータを物理的に依頼者の近傍まで運搬するために要した時間が21秒、また、TransferJet Xによって撮影データの再生装置への無線伝送が完了するまでの時間が34秒であった。データ容量を、見廻り依頼者の元への配信が完了するまでの時間で割ることでスループット換算値が得られる。上記の場合、撮影データは4K解像度の映像をH.264/AVCで即時圧縮することで10.48 Gbyte(83.84 Gbit)の容量となるがが、これを配信完了に要した合計時間55秒で割ると、スループット換算値としては1.52 Gbps相当になる。次に、オフィスビルにおける複数の異なる場所で撮影したデータが、特定の見廻り依頼者の位置(データの届け先に該当)まで転送が完了するまでの時間を実際のロボットを用いて評価した。図11は、ロボットのSLAMで構築されたフロアマップ上に、本実証実験で設定した見廻り依頼者と複数の見廻り場所の位置をプロットしたもので、図中の距離は、各見廻り場所からデータの届け先となっている見廻り依頼者の位置までの移動距離を示している。ロボットは、依頼を受けた各々の見廻り場所に到着後、1分間の4K解像度での撮影を行うと想定した。このときの撮影データは、上述のオフィスルーム内の実験で取得されたものと同じデータ容量(10.48 Gbyte)見廻り場所見廻り依頼者撮影データの運搬撮影データの伝送再生装置図10 撮影データが見廻り依頼者の元に届くまでの流れ図11 見廻り依頼者(データの届け先)と複数の見廻り場所の位置をプロットしたフロアマップ102 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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