発信や交換を行う機能を有するYeST+を搭載しており、数百m範囲内に存在するほかのロボットの存在検出や協力依頼、互いの位置情報を知らせ合うなど、ロボット同士で協調動作することが可能となっている。図13では、まず、見廻り依頼者はIoTメッセージ端末を用いて920 MHz帯IoT無線フレームを発信し、周辺のロボットに見廻りを依頼するが、この際に、見廻り場所の位置情報(Position A)と見廻り映像データの届け先の情報(Position B)が無線フレームの中に挿入している(図13①参照)。見廻り依頼を受け付けたロボットは、同じく920 MHz帯IoT 無線を用いて、見廻り場所である“Position A”により近い位置に見廻り可能なロボットがいないか検索を行い、発見された場合には、そのロボットに対して見廻り場所の撮影を依頼する(図13②参照)。今回の実証システムでは、この検索・撮影依頼は、“問合せ・応答”という1往復のメッセージ交換でまとめて実現している。問合せ無線フレームには、見廻り場所の撮影を依頼することを示す情報が搭載されており、周辺に複数存在し得るロボットに同報(ブロードキャスト)される。これを受信して見廻り場所の撮影を行うことを了承したロボットは、依頼元のロボットに対してユニキャストで了承応答するとともに、見廻り場所に移動して撮影を開始する。図13では、さらに、運搬係ロボットは見廻り係ロボットからの応答を受信後、見廻り場所“Position A”に移動し見廻り係から撮影データを受け取っている。その後、届け先である“Position B”まで撮影データを運搬し、TransferJet Xにより再生装置に無線伝送する(図13③参照)。なお、今回の実証システムは、3台以上のロボットの協調動作にも対応しており、例えば、撮影データを異なるロボット間で協力してバケツリレー的に転送を行うことで、より広域かつ柔軟な範囲の撮影データの収集・配信が可能になる。また、図13①~③の見廻りの依頼から撮影データが届くまでの動作については、同時に複数の異なる見廻り場所に対して実践することも可能である。4.3ミリ波IoT搭載自律型移動サービスロボットを使った「ストップ&ゴー」実証ミリ波IoT搭載自律型移動サービスロボット2台を用いた、「ストップ&ゴー」方式によるすれ違い通信実験も行った。図14に実験構成を示す。2台のうち片方のサーボスロボットは停止状態として、他方のサービスロボットがスタート地点から遠隔操作による発進命令に基づき240 cm離れた目的地(ストップ地点)まで移動するようにスケジュールしつつ、ロボット同士が最接近する地点を一時停止なしで通過する場合と、最接近地点で5秒から40秒までの停止時間を設けた場合のファイル転送能力について確認した。データ転送については、搭載するミリ波IoT送受信機間が通信可能な圏内となった後2ミリ秒以内にリンクが確立され、即座にファイル転送が開始される仕様となっている。異なるサイズのファイル転送を上位アプリケーションとしてはFTPを用いて行い、同アプリケーションログによって確認可能な、ファイル転送時間とスループット値を評価した。図15に、停止時間を設けることなくロボット間でのファイル転送を試みた場合のファイルサイズに対するデータ転送効率(スループット)の関係の一例を示す。本検証では、ファイルサイズとして1 MB、10 MB、50 MB、100 MB、500 MBのファイル転送について、サービスロボットの移動速度が、0.2 m/s、0.4 m/s、0.6m/s及び0.8 m/sの場合の4パターンについて検証した。いずれの速度についてもファイル転送に成功したのは、100 MBサイズのファイルまでであり、500 MBのファイル転送には失敗した。なお直感的には低速移動であ-30cm-60cm0.0mData Transmitter(PRC)+30cm+60cm+90cm-90cmDistance = 2.0mMove-120cm+120cmData Receiver(DEV)StartpointStoppointPausingpointMove図14 「ストップ&ゴー」によるモビリティ間すれ違い実験の構成104 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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