まえがき1.1背景COVID-19パンデミック下での非接触型サービスのニーズの高まりに伴い、セキュリティ、清掃、消毒、配送などの幅広い分野における自律移動型サービスロボットが急速に社会に普及してきている。我々は、これらのサービスロボットがサービスロボット本来のタスクを遂行しながら、見み廻まわりを目的とした動画撮影などのセンシングを行い、センシングデータを配信するネットワークである“Piggy-back Network”の構築を推進している。Piggy-back Networkではロボット間で確率的に発生するすれ違い通信に基づくStore-Carry-Forward(SCF)技術[1]を用いることで、インターネットやクラウドに頼らずに大容量データを高速で転送することが可能である[2][3]。この仕組みを用いて、ネットワーク内のロボットが自律的に各々のセンシングコンテンツを拡散・共有し合えれば、ネットワーク管理者や外部ユーザが最寄りのロボットにアクセスするだけでネットワーク内のあらゆるセンシングデータを入手可能となる。しかしながら、SCF技術によるデータ転送を成功させるには、ロボット本来の作業ルートから逸脱して転送相手と接近する必要も出てくる。そこで、もし、各ロボットが所有するセンシングデータ一覧情報がロボットの作業ルート逸脱前に入手でき、ロボット間で転送すべきデータの有無、つまりロボット間すれ違い通信の必要性の有無を事前に判断できれば、効率的な運用につながることとなる。1ソーシャルICTシステム研究室では、主に構内で活躍するサービスロボットのすれ違い通信を用いたデータ集配信プラットフォームの構築を推進している。本稿では、各々のサービスロボットによって取得されるセンシングデータ(映像ファイルなど)をプラットフォーム内の全ロボットに拡散させるための、効率的なデータ管理機能を紹介する。具体的には、各ロボットの活動記録を他のロボットと共有し、どのロボットがどのセンシングデータを所有しているかを把握することを目的として分散型台帳技術を用いる。本プラットフォームに適した台帳の構造として、我々は有向非巡回グラフ(DAG: Directed Acyclic Graph)構造を持った台帳構造を提案する。シミュレーションにより、代表的な台帳であるブロックチェーンと比較して、提案するDAG型台帳を用いることで、センシングデータ及びロボット活動記録が全ロボットに拡散されるまでの遅延が抑えられることを確認した。NICT Social ICT Systems Laboratory has been promoting the construction of a data collection and dissemination platform using opportunistic proximity communication among service robots that are mainly active in the premises. In this paper, we propose an efficient data management technique to disseminate the sensing data (e.g., video files) acquired by each service robot to all robots in the platform. Specifically, we use distributed ledger technology to share the activity records of each robot with other robots and to keep tracking which robot owns which sensing data. As a suitable ledger for this platform, we propose a directed acyclic graph (DAG) structure. Through computer simulations, we confirmed that the proposed DAG-based ledger reduces the delay until the sensing data and robot activity records are disseminated to all robots, compared to the blockchain, a con-ventional ledger.4-4-2 分散型台帳技術を用いた自律型モビリティ利活用データ集配信技術の研究開発4-4-2Distributed-ledger-enabled Data Collection and Dissemination Technology by Autonomous Mobility渡辺良人 荘司洋三WATANABE Yoshito and SHOJI Yozo1074 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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