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帳を表現する。我々が提案するDAG型台帳の構造を図4に示す。ブロックチェーンとは異なり、一つのブロックは二つの親ブロックを参照している。従って、台帳全体では枝分かれを含む構造となることが分かる。各台帳はメインチェーンとサブチェーンで構成されている(図4(a))。メインチェーンは、以下で説明するブロック生成方法により、自身がブロック生成に関わった最新ブロック(以下、「メインチップ」とする。)を含むその全ての親ブロックの集合から成り、サブチェーンはそれ以外のブロックの集合から成る。サブチェーンに含まれるブロックは「台帳同期フェーズ」で対向するデバイスから受け取る。つまり、「台帳同期フェーズ」が行われた2ノード間でも図4(a)と図4(b)で示すように、メインチェーンとサブチェーンの構成は異なるのが通常である。3.2ブロック生成方法台帳技術において耐改竄性を高めるブロックの生成手段として、達成困難・再現困難なタスクを実行するという条件が必要となる。Bitcoin[5]やEthereum[6]などのブロックチェーンでは、2021年9月現在、Proof-of-Work (PoW) と呼ばれる方法でブロックの生成が行われている。つまり、ブロックを生成するために多量の計算により一定条件を満たすハッシュ値(Nonce)を導出するという達成困難なタスクを実行する。しかし、文献[7]にもあるとおり、その計算を実行させるための電力の生成に伴い排出される二酸化炭素が地球環境に悪影響を及ぼすという指摘がある。一方、我々の台帳技術では、Piggy-back Networkの特性を大いに活いかしたブロック生成手法を用いる。Piggy-back Networkにおいては、近距離無線通信を用いた「データ交換フェーズ」がある。本フェーズに移行するには、ノード同士が物理的にデータプレーンの通信距離Dd内まで移動し、さらに大容量データを転送する必要がある。これは、容易には達成困難であるというブロックを生成するタスクの条件を満たしている。そこで、我々は「データ交換フェーズ」の完了をもってブロックの生成を行うProof-of-Forwarding(PoF)を提案している[8]。ここではPoFにより、データ交換完了時に、対向する2ノードが所有する未保存トランザクション履歴と、お互いのメインチップのハッシュ値を含めたものを最新ブロックとして生成する。いま、「台帳同期フェーズ」を終了した図4(a)の台帳を所有するノードviと図4(b)の台帳を所有するメインチェーンサブチェーン図4 台帳構造の例 (a)と(b)は2ノード間で同期されたものであり、台帳構造は同じであるが、その構成要素であるメインチェーンとサブチェーンが異なる。これら2ノード間でブロック生成が行われると、共通した(c)の構造となる。メインチェーンサブチェーンメインチップジェネシスブロックメインチェーンサブチェーンサブチェーン(a)(c)(b)110   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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