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まえがき大規模に分散した大容量データ——例えば高解像度カメラで長時間撮影した動画データやセンサで取得した膨大なログデータ を携帯回線を用いた従来の方法で収集したり、複数ユーザで共有するには多大な時間を要する。こうした問題を解決するため、筆者らはミリ波通信とStore-Carry-Forwarding (SCF) 技術により物流網にデータの流通を託すPiggy-back Networkを提唱している。先行研究[1][2]では実際に都市部を走行する車両の走行データを分析し、携帯回線(4G)やIEEE 802.11.acを利用するよりも高速なエンドツーエンドでのデータ転送が可能であることを主張している。たとえば、100 Gbytesのデータを受け取って2 km先の宛先に届けるとき、20 Gbpsのミリ波通信でデータを受け取り、宛先の元まで20 km/hで移動すれば、実質2 Gbpsのエンドツーエンドのスループットが達成される。近年、ロボットの社会実装が盛んになってきており、同技術はロボット同士の小さなコミュニティにも適用が期待できる。ロボットは様々な高精度センサを搭載し、周辺の情報を取得したり、我々消費者向けのニュースや動画といった膨大なコンテンツを提供するなど頻繁に大容量データを扱う。このようなロボット同士が互いにデータを共有・分析することで、気づきが生まれ、より高効率的な稼働や、より高品質なサービスの提供が可能1ミリ波通信において、移動するモビリティ同士――例えば車やロボットがすれ違いざまにデータを送受信する時間は極めて限られる。扱うデータをモビリティ間で事前に決めておくことで、通信時間を最大限活用した効率のよいデータ転送が可能となる。本稿ではモビリティ間で事前にデータの照会を行い、差分及び更新チェックを行うことをMulti-Armed Bandit (MAB) 問題としてモデル化し、強化学習アルゴリズムであるTug-of-War (TOW)を用いて解くデータ照会手法を紹介する。シミュレーションによる性能検証結果から、セグメント状に管理された10のデータにおいて、データ別に更新頻度を設定し、そのばらつきが大きい場合、強化学習を用いたデータ照会による更新データの検出率はランダムなデータ照会と比較して最大40 %高いことが示された。本手法はデータの更新頻度や重要度の学習が可能であることから、ミリ波による効率的なデータ更新・同期が期待できる。Mobilities, such as vehicles or robots, can transmit and receive data using millimeter-wave communications only for a limited period of time. By predetermining the data to be handled between mobilities, the efficient data transfer is possible, and this time can be utilized maximally. This paper introduces the modeling of Multi-Armed Bandit (MAB) problem of difference and update check by prior data query between mobilities and the data query technique using Tug-of-War (TOW) , a rein-forcement learning algorithm. From the result of performance verification by simulation, it is shown that the detection rate of the update data by the data query using reinforcement learning is up to 40% higher than using random query, when the update frequency was set for every data in 10 data managed in the segment state and the dispersion is large. The efficient data update and synchroni-zation by the millimeter wave can be expected, because this scheme can learn the update fre-quency and the importance of the data.4-4-3 強化学習を用いた自律型モビリティ利活用データ集配新技術の研究4-4-3Reinforcement Learning based Data Query Scheme for Contents Synchronization between Mobilities長谷川 聡 荘司洋三HASEGAWA So and SHOJI Yozo1134 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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