図1 自律移動型ロボット間のデータ同期・共有のためのネットワーク図2 2台のロボットによるデータ照会からデータ送信までの一連の流れ図3 2台のモビリティ間のデータ照会スキームになる。ここで問題となるのが、データ共有に必要となるミリ波の通信性とロボットの移動である。ミリ波通信は高速かつ大容量のデータ通信が可能である一方で、通信距離が短く、ロボット同士が相互に移動する状況では通信時間が極めて限られる。そのため限られた通信時間を最大限活用するためには、事前に送受信の対象となるデータを決めておくことが適切である。本稿では自律移動ロボット同士によるミリ波SCFデータ転送ネットワークのための転送データの事前交渉技術について紹介する。具体的にはセグメント状に管理されるデータを同期するためのデータの差分及び更新チェックのMulti-Armed Bandit (MAB)問題[3]としてのモデル化、MABアルゴリズムであるTug-of-War (TOW)ダイナミクス[4]–[8]ベースのデータ紹介手法を紹介する。 システムモデル図1は複数の自律移動するロボットで構成されたネットワークを示している。ロボットはマイクロ波やミリ波といった複数の通信方式での通信が可能であり、それぞれを用途によって使い分ける。ロボットの稼働エリア内には外部との通信を可能にする基地局が設置されてもよく、一部のエリアにおいてはクラウドやサーバとの通信が可能である。例えば、特定エリアに入ったロボットがクラウド等から更新データを受信したときや、あるロボットが自身で更新した内部データをネットワーク全体でこのデータを同期するのが目的となる。本システムにおいてはLTEや既存のマイクロ波通信では送受信に時間を要するサイズの大きな更新データを扱うことを想定する。図2は2台のロボット間でデータを転送し、同期する一連の動作を表している。ロボットが他方のロボットのマイクロ波通信域に入ると、データを共有してもらいたいロボットはもう一方の提供元ロボットに特定のデータの照会を行う。この際、容量の大きな元データそのものを送信するのではなく、元データの内容を表す小さなメタ情報をやりとりする。照会を行ったロボットは自身の保持データと比較することで、今後更新すべきデータであるかどうかを判断する。続いてロボット同士が近接してミリ波通信域に入った場合、先ほどの照会情報に基づいてデータの転送を行う。データ転送はロボット同士の近接を前提としているため、実際ロボット同士が近接できなかった場合にはこれらの事前準備は徒労に終わる。そこで、[9]の研究のような移動予測技術を用いることで、近接可能なロボットと交渉を行うことが有効的と考えられる。図3はロボット間のデータ照会の様子である。ロボットは内部にデータベースを保持しており、 個のセグメントによって構成されていることを想定する。ロボットは一度に1セグメントのデータコンテンツについて問い合わせることができ、もう一方のロボットは問合せを受けたデータのメタ情報を返す。この図では、ロボットがセグメント3のデータを問い合わせ、もう一方のロボットがそれに対して応答している様子を示している。問合せを行ったロボットはこの応答結2114 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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