本稿では、NICT総合テストベッドを通じた国際連携に関する取組について、多国間会議及び多国間・二国間MOU等を通じた協力について述べた後、国際共同公募及び国際共同プロジェクトについて述べる。最後にその他の協力の枠組み、JGN国際ネットワークの変遷とともに、第5期中長期計画への展望について述べる。多国間会議NICTは、総合テストベッドを通じた国際連携を推進するため、ICTに関する政府間及び研究ネットワーク間の多国間会議への参加・貢献を行っている。2.1G7及びG202016年4月に開催されたG7香川・高松情報通信大臣会合[3]では、あらゆる人やモノがグローバルにつながる「デジタル連結世界」の実現に向けてG7各国の連携・協力による取組を強化することとし、そのための基本原則や行動計画を取りまとめた成果文書として「デジタル連結世界憲章」及び「G7 情報通信大臣共同宣言」が採択された[4]。また、G7各国の具体的な取組を集め、国際機関も含めた相互の連携・協力を図るべく、「G7協調行動集」(共同宣言の附属書)が策定された[4]。憲章のG7 ICT戦略では、i. ICT へのアクセスの向上において、「(b) (前略)世界規模での ICT インフラ(中略)の、質及び手頃感の向上」が、また、iii. イノベーションの促進において、「(f) 研究開発及び新たな技術の受容の促進」が言及された。共同宣言の行動計画では、i. ICT へのアクセスの向上において、「12.(前略)世界的な連結性の強化にも資する、教育及び研究開発の目的のためのオープンなインフラを提供する国立研究教育ネットワークの整備、相互接続及び利活用の重要性を認識する。」旨、また、「27.(前略)IoT、ビッグデータ分析、5G モバイル通信、人工知能(AI)及びロボット技術などの新たな技術に関する、ICT の研究開発を奨励することへの合意を再確認する。(後略)」旨言及された。また、協調行動集では、イノベーションの促進において、「日本は、研究開発のためのオープンなインフラを提供するテストベッドネットワーク(JGN)を含む、国立研究教育ネットワークにおける継続的な連携を歓迎する。」旨言及された。2021年4月に開催されたG20コネクティビティとソーシャル・インクルージョン・フォーラム[5]において、NICT児島総合テストベッド研究開発推進センター長から、研究教育用超高速ブロードバンドの接続性と国際共同研究プロジェクトの成果について発表を行った。発表では、ブロードバンドへの接続性は、テレワーク、遠隔医療、遠隔教育等ICT利用の急拡大により非常に重要になっており、Beyond 5Gの開発に向けて、超高速ブロードバンドへの期待が世界で高まっている旨強調した。2021年8月にイタリア(トリエステ)で開催されたG20デジタル大臣会合[6]では、強きょう靭じんで強力で持続可能で包摂的な経済回復のためのデジタル化の活用を全体のテーマとして議論が行われ、「G20デジタル大臣宣言」が採択された[7]。大臣宣言のデジタル経済では、4月のフォーラムを踏まえ、vii. 接続性と社会的包摂において、「高性能なデジタル接続を含む、安全で強靭性のあるインフラに基づく高品質なデジタルサービスの提供は、将来的に非常に重要である。接続性は、労働力の中断を最小限に抑え、オンラインでの学習や仕事をサポートし、公共サービスやスマート医療システムへのアクセスを可能にし、地域の結束力を強化し、将来の労働力を準備するために、誰でも、どこでも、仕事のスキルアップや再教育プログラムを促進する。」旨言及された。また、「2021 年 4 月に開催された「コネクティビティとソーシャル・インクルージョン・フォーラム」を機会とした、G20 各国、国際機関、その他のステークホルダーによるオープンな対話の中で、我々は、接続性によるイノベーション、成長、包摂性の促進、接続性を通じたグローバルな課題への取組、全ての人のための接続性に関する優良事例の共有といった重要な議題を取り上げた。」旨言及された。2.2APAN(アジア太平洋)APAN (Asia Pacific Advanced Network、アジア太平洋先端ネットワーク)[8]は、アジア太平洋地域において、研究教育コミュニティ向けに先端ネットワーク環境構築の調整をする場であるとともに、ネットワーク技術やネットワークを使ったアプリケーション・サービス展開の推進を行っている。また、この目的のために、欧米を始めとした他の国際機関との協力関係を結んでいる(図1)。APANは1997年6月に国際コンソーシアムとして発足し、2008年8月に改組し香港において法人として登録している。2021年8月現在の会員カテゴリとカテゴリごとの会員数は次のとおりである。 •Primary Member: 17機関。各国/地域ごとに1機関で投票権を有する会員。 •Associate Member: 3機関。各国/地域から複数参加でき、ネットワーク提供の調整をする会員。 •Affiliate Member: 2機関。ネットワークを利用するコミュニティを代表する会員。 •Liaison Member: 1機関。APANと目的を同じくする同業組織。224 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)3 NICT総合テストベッド利活用の向上と拡大を目指して
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